月島屋の月島大介

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月島屋の月島大介

          ◆  お盆期間を前にサクラトラベルは忙しい日々を送っていた。  パッケージツアーに添乗してくれる派遣会社の添乗員が打ち合わせや精算に訪れたり、カウンターで接客をしたり、ホームページでの予約状況を確認したり。  その合間をぬって、律は例の社員旅行の行程案をまとめていた。  お客様の希望や予算に応じた手配旅行は、その準備段階から当日の添乗に至るまで、やることがたくさんある。もちろんひなたのフォローもつくし宮原にも相談するが、今回は律が担当責任者になるので、いつにも増して張り切っていた。  月島屋の社員旅行は、毎年温泉だと聞いている。  11月平日の1泊2日で、30名くらいで観光バス1台を貸し切り、観光地を巡るのが通例らしい。それを踏まえ、律は北方面と南方面で1箇所ずつ温泉地をピックアップしていた。  バスで向かうのであまり遠いと疲れてしまうし、かといって近すぎるとせっかくの旅感が薄れてしまう。程よい距離で、紅葉が楽しめる観光地も回りたい。  パッケージツアーだと、少しでも多く観光地を回れるよう強行スケジュールになりがちだが、社員旅行はゆとりを持たせた方がいいだろう。人混みも避けたいところだが、穴場すぎてもつまらなくなりそうだ。  日頃の疲れを癒してもらうには、温泉の泉質にもこだわりたい。予算の関係で部屋ごとの露天風呂は無理だが、景色のきれいな露天風呂は必須だろう。  そしてもちろん、城観光は外せない。  できれば行きと帰りに1城ずつ回りたいところだが、それだと飽きられてしまうからここは涙を呑んで1城にしよう。  ……いや、城に関しては自分がガイド案内をするし、飽きさせるようなことは絶対にないから2城回っても大丈夫か。それなら断然、南方面だな。珍しい城壁を持つ城と、ぜひとも見てもらいたい天守閣がある。  そんな風に、ここ数日は行程案を吟味していた律なのだが、今朝になって急きょ翌週予定の打ち合わせが今日の夕方になったと聞いた。 「えっ」  先方も都合のあることなので仕方ないが、律は慌ててプレゼン資料をまとめたのだった。
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