秋の行楽シーズン

2/3
76人が本棚に入れています
本棚に追加
/112ページ
「梨狩り農園から中止の連絡来てるぞ。他はどうだ?」 「だめです、どこもこの間の台風で梨全部落ちちゃったって」  そして、台風シーズンも到来していた。 「皆さん、最新の台風情報出ましたぁ」 「木嶋さん、ありがとう!」 「ああっ、だめだ。飛行機飛ばない」 「足止め食らってるのはどこ?」 「延泊確認して!」  今年は猛暑の影響なのか、台風が多い。  かくいう桜木市にも、台風が接近中だ。 「木嶋さん、電車動いてるうちに今日はもう上がっていいよ」 「ありがとうございます、お言葉に甘えます」  外はまだ小雨程度だが、風は割と強い。  お先に、と帰る木嶋睦美を見送る律も電車だが、今日はこのあと予定があった。ちなみに、宮原とひなたは車だ。 「りっちゃんの初添乗打ち上げ会! やっとできると思ったら、台風来るんだもん。ま、家飲みも楽しいよねー」  ひなたが楽しみにしている飲み会に最初は睦美も参加予定だったが、台風接近に伴い急きょ居酒屋から家飲みに変更になった。泊まりも想定しているので、睦美は今回不参加だ。 「大ちゃんち、久しぶり。楽しみ!」  そして、場所は大介の自宅だ。  月島屋の社員旅行から、2週間が経っていた。  大介からは翌日にお礼の電話があり、律は嬉しくも恐縮しきりだった。  社員旅行では2日目の親族会議で皆の雰囲気が悪くなったものの、その後の工場見学で逆に結束を深めたようだ。 『あの工場を選んでくれてありがとう』と言う大介に『あの工場を提案したのはひなた先輩だ』と言うと、『それなら一度皆で食事に』という流れになった。  実際、多津乃湖サブレの工場見学を言い出したのは、ひなただ。律は和菓子工場ばかりを探していた。ひなたには、いつも助けられている。  その後、いつのまにか 『りっちゃんの初添乗打ち上げ会』とひなたに名称を変えられた食事会は、なかなか皆のスケジュールが合わなかった。ようやく決まった今回も台風で延期かと思ったが、家飲みなら大丈夫だろうということで決行となった。  木嶋さん、ごめん。
/112ページ

最初のコメントを投稿しよう!