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ドイツ、ハイデンベルクの自動車免許教習所。
17歳の少年が免許合宿最終日を迎えている。
試験官「じゃあこれで最後だから、安全運転でな!」
少年「はい!」
無事試験が終わり、少年は教習所を出た。
ドイツでは17歳から運転免許が取得できるように
なったが、それは保護者同伴で運転が可能であるため
誰かに送ってもらう必要があった。
合宿から家に帰る向かいは親は仕事が忙しい。
そこで両親は少年とも昔から親しい、
近くで農家を営んでいる叔父に、
家まで送ってもらうことになった。
少年は叔父とそのような通話を終え、電話を切った。
直後、叔父に麻薬組織からの電話が来た。
敵組織が倉庫にある麻薬と一緒に盗もうと
しているらしく、一番近くにいてなおかつ
熟練の運び屋である叔父さんに急遽、
それをある場所まで運んでくれないかと、
組織は頼んだ。叔父は最初に甥を帰らせる旨を
伝えて断ろうとしたが、叔父としてはそのある場所
は、少年の帰路の途中にあったので
叔父は渋々その依頼を受けることにした。
最後に「いつも通り、安全運転でな」と、
言い残して切れた。
叔父はそれがある倉庫に行き、
荷物を積んで少年の元に向かった。
少年は叔父さんに会い、
麻薬を乗せた軽トラに乗り込もうとしている。
少年は物色し始めた。トヨタの軽トラ。
ガラスは厚めで、右ハンドル。
厳重に包装された野菜であろう荷物。
収納には医療キットと………
銃……
叔父さんはそんな見るもんはないぞと、
何か隠したいような顔をした。
少年は叔父さんになぜこんなものがあるのと聞くと、
叔父さんは「仕事の都合でな、しょうがないんだ」
と、言った。
少年は適当に相槌を打った。
叔父さんの軽トラはアウトバーンを走った。
ラジオをつける、なんてことない今日のニュースが
聞こえる。窓を開けて、凄まじい風圧と景色を見て、
アウトバーンの速度を体感した。ラジオでは、
アウトバーンでカーチェイスが起きているという
ニュースが流れる。
ラジオ「ニホンからのニューウェーブ!
最高の曲を楽しめ!King gnuで「It’Flash!!!」」
輝き。
爽快な曲が流れている。気分が高揚し、
時速は200kmを超えた。叔父はそろそろ速度を
下げようとし、ブレーキを踏んだ。
その時、異音がした。
ブレーキを踏んでもメータの針は動かない。
ブレーキは壊れた。「It‘Flash!!!」
ラジオからの軽快な掛け声と同時に、
後方から車が追突してきた。
追突男「どけや!ぶっ殺すぞ!!」
続々とチェイス集団は少年たちの
もとまで迫る。同じく警察も来る。
流れる軽快な歌詞が不穏に感じる。
速度を出しておりなおかつブレーキが
壊れているので、止まれない。
警察にチェイスの一員だと間違われ、
「止まれ!!」と言われる。
前方のチェイスの一員が閃光弾を投げる。
前方のパトカーは操作不能になり、
車は回転しながら少年たちの軽トラにぶつかる。
軽トラの車体は45度ギリギリまで傾き、
荷台は思いっきり崩れた。『ヤ!』
叔父「薬が!!」少年「野菜が!!」
ぶつかって来たパトカーは
後方のパトカーに巻き込まれて事故。
少年たちは明らかにカーチェイスに
巻き込まれていることに気づく。
叔父としては麻薬が漏れたことや、
完全にカーチェイスの一員認定
されたことを受け、このままアクセルを
踏み続けて高速を抜けることにした。
緊急的に道路脇で停車することもあったが、
この速度でのいくつもの
車線の変更は絶対に事故につながると予測した。
そして改めて叔父と少年はカーチェイスに
巻き込まれたことを確信した。
そして会話を遮るように、叔父の携帯が鳴った。
叔父が所属している麻薬組織からの電話が来て、
叔父の通るアウトバーンでカーチェイスが
発生していることを心配し、
巻き込まれてないか確認した。
叔父は嘘をついて安全だと言い張った。
組織は信じた。
最後に安全運転でと言われ切られた。
しばらく走っていると、隣の大型トラックの人から
「見ねぇ顔だな、どっから来たんだ」
と声を掛けられた。
カーチェイス連中の新入りだと勘違いされ、
最後に「何かあったらいつでも頼れ」と、
頼もしい声かけをくれた。
すると軽トラと大型トラックとの間から、
麻薬を奪う画策をした
敵組織の人間が車窓から顔を出した。
「お前がアウトバーンに乗ると賭けた。
まさか本当に当たるとはな。」
「……君は誰だ?わしはただの農家…」
「Bang!!!」銃声が聞こえた。
こめかみを中心にヒビが入る。
「ヒィぃ!」敵「…クソ農家が…」
敵「農家の軽トラは200kmも出せねぇし
防弾ガラスもねぇんだよ!」
少年「(確かに!!叔父さん何者??)」
敵「次ふざけたら殺す。
それとブツはどこにやった?」
叔父「…えっと、あのぅ」
敵「早く答えろ!もう降ろしたのか!!」
叔父「…道路です。」
叔父「…さっき車が衝突して来て、
衝撃でブツは全部…」
叔父は咄嗟に頭を伏せた。
敵「殺す!」窓が割れた。敵はすぐさま銃弾を放ち、
叔父の腕に当たった。
少年と叔父は咄嗟に手を挙げた。『ごめんて‼︎』
咄嗟に手を挙げた。そのせいでハンドルが出鱈目だ。
車は揺れ動いている。敵「クソが!!」
銃を出鱈目に放っている。
それに大型トラックが気付くと、
敵の車に思いっきり迫り、
軽トラで挟み撃ちにした。
敵「カチカチカチ、クソ!撃ちすぎた!」
おもむろに弾を入れ始める。
少年は車の収納にあった銃を取り出し、
牽制した。「う、撃つぞ!」
「…クソガキが!」敵が動揺している間に、
叔父は敵のドアを開け敵を引き釣り下ろそうとした。
敵は銃で叔父の頭部を殴っている。
もう一度大型トラックがぶつかる。
敵は放り出された。「バギッ」
敵は軽トラのタイヤに頭を潰された。
右サイドミラーには、
軽トラの血のタイヤ痕が残っている。
叔父「すまねぇ!早速助けてもらって!」
大型トラックの人
「いいってことよ、チェイスの仲だろ!」
叔父「あは、ahaha……」
少年「仲間じゃない!ねぇ!さっきの人誰?
叔父さんは何をやったの!?」
パトカーのサイレンが聞こえてくる、
合流して来たようだ。
少年「ねぇってばぁ!!」
叔父は止血していなかった。
出血多量と脳震盪で失神していた。
ハンドルが出鱈目でまた他の車にぶつかった。
チェイスの一員「んだてめぇ!?」
少年「すみません!」と、
その時隣の車は後方にいたパトカーに
引きづられて行った。
パトカーのスピーカー
「我々は全員強制停止させるつもりだ!
この先も封鎖されている!
止まる意志のないものは、力尽くで止めるぞ!!」
少年は戦慄した。
この状況だと絶対に僕らは逮捕されると。
少年は医療キットにあった包帯などを使い、
叔父さんを止血した。
そして、叔父の右足を右腕で押しながら、
左手でハンドルを掴んだ。
「…落ち着け、安全運転で…」
そう言ってアクセルを踏み込んだ。
警察とカーチェイス集団との攻防に
巻き込まれながら、それを切り抜けたが、
先に封鎖してしていた警察車両に追突し、
事故を起こした。少年が最後に見たのは
警官が吹き飛ぶ姿だった。
カーチェイス集団とそれを追っていた
警察もろとも玉突き事故。
駆けつけた消防車が、
炎上し始めた火種を消化している。
その放水は軽トラの空いた窓に
注ぎ込まれ車内は水浸しになった。
冷たさで少年と叔父は目が覚めた。
少年は記憶と意識が曖昧だ。
ドアから出て叔父は濡れたタバコの中から
マシなものを一本取り出し、
ライターで火を点けようとしたが、
ライターは使い物にならなかった。
キレて車の山に投げたが、大爆発が起きた。
爆風で飛び散った燃えた部品に気づくと、
タバコに火をつけて
「帰るか」と言い、パトカーに元へ歩いてった。
警察と喋っているうちに少年は
何が起きたかを鮮明に思い出してきた。
被害はカーチェイス集団、警察計2名死亡。
11人の重症者。
警官が死亡したのは少年たちが
乗っていた軽トラが原因だ。
少年は罪悪感に駆られた。自分が殺したのだと。
叔父はそれを察したかのように宣言した。
全部自分がやったと言った。
自分と甥は関係なく、運び屋の仕事で事故が起きた。
もちろんチェイスに巻き込まれたことも事実だが、
なぜか叔父は全ての罪を請け負って
現行犯逮捕された。
少年は叔父に複雑な感情を抱いた。
叔父が運び屋だったこと。
自分が叔父を好いていた事。
なのに運び屋の仕事と一緒に
少年を向かいに行ったこと。
最後に責任を果たして捕まったこと。
少年は初めて自分で公道を運転した。
交通安全も犯した。
おまけに人が死んだのを目撃し、跳ねて殺した。
少年にはまだ銃とハンドルを
握りしめた感触が残っている。
安全運転をしているのに、
なぜ事故に巻き込まれるんだ。理不尽だ。
少年はそう思った。
少年には無免許運転の疑いがあったが、
今日免許を取得し、保護者が同伴で運転可もあり、
状況からも不問とされた。
少年がパトカーで家に帰ると、
その家族は憔悴し少年を心配していた。
警察が今回の経緯を親に説明している。
そのあと家族会議があった。
叔父さんとは縁を切り、
今後一切関わることを少年に禁じた。
両親は仕事を減らし、家にいる時間を増やした。
少年はもう一生車に乗りたくも
運転したくもないと思った。
後日少年は免許を返納した。
3年後
映画館を出るとそこは土砂降りだった。
彼女「うわぁ、土砂降りだよ。」
少年「……僕傘探しに…」
彼女「…タクシー!」
彼女はピンと挙げた手を振っている。
少年「えっタクシー呼んだの?」
彼女「この後も行くところあるのよ、
ドレスコードが台無しになるじゃない」
少年「そう、だけど。
(でもまぁタクシーだし
あんなことにはならないだろう…)
彼女「運転手さん、安全運転でね!」
少年(安全運転…ね…)
運転手「もちろん」もう一人乗り込んできた。
「すみませんもう満員で…」
「いいから出せ」そう聞こえた。
「カチャ」コッキング音が聞こえた。
彼女「ヒャァ‼︎ガチャ」銃声。
少年は視界の端に血と脳漿が飛び散るのを見た。
「出たら殺す、早く出せ。」
END
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