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身体の相性って本当にあるんだ。
圭吾と身体を重ねるたびに沙耶香は思った。
陽一にもその前の彼にも、それを感じたことがなかった。
私とだけ合うんだろうか……
それとも圭吾が、女の身体を知り尽くしているのだろうか。
サロンの他の女性とも会っているのかしら。
圭吾との関係がニカ月を過ぎ、沙耶香は見えない相手に嫉妬している自分に気づいていた。
「沙耶香さん、どうかした?」
圭吾が半身を起こして顔を覗き込む。
ハッとして、顔を左右にふって微笑む。
圭吾は沙耶香に唇を重ねると、ふいに顔を上げた。
「いつも三時間くらいでお別れだよね」
「う、うん……」
「一度でいいから、泊まれないかな」
「えっ……?」
それは無理と頭に浮かんだが、口にするのをためらう。
「沙耶香と、一晩いっしょにいたい……だめかな……?」
鼻先がふれあい、沙耶香の瞳の奥を覗くように見つめてくる。
沙耶香は目線を逸らした。
一度泊まってしまえば、きっとずるずると引き返せなくなる。それほど圭吾は魅力的だ。この波に飲まれたら引き返す自信がない。でも、陽一を傷つけたくはない。
「ごめん圭吾さん……それは……」
できないとは言えずに、顔を横にふった。
「わかった。ごめん、ムリいって」
圭吾は寂しげに微笑み、沙耶香の首筋にキスをした。沙耶香はまた、愛の海に溺れていった。
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