2/3
前へ
/127ページ
次へ
 恐らく少女にとっては、何度も海に飛び込んで、潜水して何かを探すという「行為そのもの」が、宝物なのではないか。そう考えると、純平は何か納得できるような気がしていた。  少女は「目的」を果たしたからか、今度は海に飛び込むような素振りはせず。岩の上でふるふると両手足を振って、水の雫を払い落としていた。そこで純平は改めて、少女の姿をじっと見て。スレンダーながらも恐らくいい筋肉が付いているのだろう体つきと、そして日焼けした全身の肌の色に、エキゾチックというか、何か「野生的」な雰囲気を感じていた。  それから純平は少女に会えた記念にと、スマホで少女の写真を撮っておこうかと考えたが。すぐに「それは辞めた方がいいな」と思い直した。見ず知らずの少女、しかも水着姿の女の子を「写真に撮る」など、傍から見れば変態行為と思われても仕方ない。昨今はこういった「盗撮行為」も、厳しく取り締まられていることだし。  純平がそんなことを考えているうちに、少女は最初に出て来た岩の向こうへと、「すっ」と姿を消してしまった。純平は「あ……」とその後ろ姿に声をかけ、せめて名前だけでも聞いておこうかと思ったのだが。それもまた「未成年への声かけ行為」として通報されるかもしれないと、言葉に出すのを躊躇ってしまった。  結局純平は少女の後を追うことを諦め、その場から立ち去ることにした。でも、偶然とはいえ「いい出会い」だったなあとしみじみ思っていると、海風が肌にひんやりと感じてきたことに気付いた。少女のことを見ている間に、結構時間が経ってしまったんだなと考えながら、再び防波堤の方へと戻り。そこから少し歩いてホテルへ帰ろうとしていたところで、いきなり道路の反対側から声をかけられた。
/127ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加