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「よう、純平! ……純平だろ?」  純平はその声を聞き、内心「しまった」と思っていた。こんなことにならないよう、早めにホテルに帰ろうと思っていたのだが、思わぬ少女との出会いで、時の経つのを忘れてしまっていた。  声をかけて来た男は、一緒にいた数名の男たちと共に、道路を横切り。純平の前に、立ち塞がるかのように並び立つと。男は純平に向かって、キッパリと言い放った。 「俺たちの出世頭の、ご帰還か。故郷をダシにして出世した気分は、さぞ最高なんだろうな?」  明らかな自分への皮肉に、純平は何も言い返せず、ぎゅっと唇を噛んでその場に立ち尽くしていた。  声をかけて来たのは、純平の高校時代の同級生であり。純平とは違って地元に残って働き、そして今は「海辺の町レジャーランド計画」に反対する地元民の一員であると共に、地元の青年団を代表する男、松田(まつだ)航己(こうき)だった。
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