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更に今、豹は自身の鋭い爪や牙が、「何のためにあるか」も熟知していた。大黒に連れられて行った海岸で、椎名課長と営業部長を襲い。そしてつい先ほど、誰の指示に従うわけでなく、自らの意思で「復讐相手」を仕留めた。自分のこの体、そして爪や牙はこうやって、「獲物を仕留める」ためにあるのだ。それを再認識した豹は、自分に備わった「強力な武器」を、「最大限」にまで発揮しようと試みていた。それこそが本当の自分、本来の「あるべき自分の姿」なんだと。
それゆえに豹は、目の前にいる「標的」が、明らかに自分を「恐れている」と感じ。その標的もまた、自分が「仕留めるべき相手」だと認識していた。目の間で火花を放つ、「黒く細長いもの」の危険は知り尽くしている。だが、自分はそれを凌駕するだけの「力」を持っている……!
豹はスタンガンを突き出した航己との距離を、じりっ、じりっと詰め始めた。同時に航己も、すぐその後ろで、じっと息を飲むようにして豹の動きを見つめている純平たちも。もしかしたらスタンガンでは、豹に襲われるのを防げないのではないか。だが結果として、こうして「岩の壁の前」で追い詰められるような形になってしまった自分たちが、目の前にいる俊敏な豹から、逃げることなど出来るのか……?
そんな中で純平は、この現状で考えうる「唯一の解決策」を考え抜いていた。可能性は低いが、しかしそこに賭けるしかない。それ以外に、自分たちが助かる方法はない……!
スタンガンを突き出す航己の背後で、恐怖に怯える里緒を庇うようにしながら。純平は豹の後方に位置する、半径4~5メートルほどの「池」を見つめていた。
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