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元々「この場所」に来たのは、海面に面した洞窟の入り口が「水面より上」にある時間だ。つまり、「干潮」の時間帯だった。それから洞窟内を進み、大黒との対面があって。大黒が檻を開けてからは、必死にここまで逃げてきたのだが。当然、それなりの時間が経過している。
洞窟に入る際は、余裕をもって干潮になり始めた頃を狙っていた。だから数時間は、洞窟内に海水が入ってくるほど、潮が満ちて来ることはない。しかし恐らく、大黒の独白を聞いていた時間もあったし、結果として「数時間」が経過していてもおかしくない。つまり、「満潮」の時間が近づいていてもおかしくないはずだ……!
潮が満ちて来れば、最初は洞窟の入り口の方から、チョロチョロと海水が流れ込んでくるだけだろうが。それはあっという間に大きな流れとなり、この「開けた場所」も、みるみるうちに海水で満たされてしまうだろう。その証拠が、豹の後方にある池だ。洞窟内にあるのに、その面積いっぱいに水を湛えている。それは、満潮になった時の海水が、随時その池の上まで流れ込んでいる証拠だ。
だからこのままの状態で、もう少し時間を稼げれば。入口の方から海水が流れ込み、この場所も水浸しになる。背後にある「岩の壁」も、登り切った箇所まで湿っている気配があったので、ピーク時にはそこまで水面が上る可能性もあるということだ。
今は自分たちを「標的」として捉えている豹も、大量の水がこの場所に流れ込んで来れば、恐らく目の前の獲物に襲いかかるより、「自分の身の安全」を最優先に考えるはずだ……!
それは純平にすると、「頼む、そうであってくれ!」という、ある種の「願望」にも似た考えだったが。それ以外に、この絶体絶命の状況から逃れる術は思いつけなかったのも、また歴然とした事実だった。
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