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と、その時。
豹の斜め後方から、石が飛んで来て。純平たちに向かって唸っていた豹の体に「かつん」と当たった。
「トッコ……!!」
そう、先に岩の壁を降りていたトッコは、洞窟の入り口に近い位置で、純平たちを待っていたのだった。それゆえ、豹に見つかることなく、純平たちに唸っている豹の後方で、「身を隠す」ことが出来ていた。
だがトッコは、そのまま入口へと逃げていくのではなく。そこから豹に石を投げつけることで、豹の注意をあえて自分の方へと仕向けた。それは、純平たちを助けようと思っての行動だと思われたが、同時にあまりに危険な賭けにも思えた。
しかし、トッコの「決意」は揺るがなかった。
豹が、石が飛んで来たと思われる方向――トッコのいる方へと、「ぐるり」と向きを変えると。トッコは更に、両手を「パンパン!」と大きく叩いて音を出し。「こっち! こっちだよ!!」と叫ぶと。そこで初めて、洞窟の入り口に向かって猛然と駆け出した。そして豹も同じく、「だだだっ!」と凄まじい勢いで、トッコの後を追い始めた。
「トッコ!」
「トッコちゃん!!」
純平や里緒がそう叫んだ時には、すでにトッコも豹も、洞窟の入り口に繋がる通路の中に、姿を消していた。いくらトッコの身体能力が高くても、さすがに豹のスピードには敵わないんじゃないか。洞窟から出る前に追いつかれたら……!
純平も里緒も、そして航己と青山も。ほぼ同時に、同じ思いを胸のうちに浮べ。そしてほぼ同時に、トッコと豹が走り去った入口への通路へ向かって、走り出した。
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