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 入口に向かって猛然とダッシュしたトッコだったが、豹もその背後から、矢のようなスピードで追いかけていく。純平たちも必死にその後を追ったが、開けた場所から入った狭い通路では、すぐにその後ろ姿は見えなくなった。  それでも必死に駆け続けた純平たちは、入口から入って最初の「分岐」があったところ、少し通路の幅が広くなり前方も見通せるようになった地点で、ようやく前を行く「ヒョウ柄」を確認した。しかし。  トッコも懸命に走っていたのだろうが、やはり獣のスピードは凄まじかった。トッコが今まさに、洞窟から出て海へ飛びこもうとしたその時。豹の方も、「がうううっ!」と唸り声をあげて、トッコに飛びついて行った。 「トッコーーー!」 「トッコちゃん……!!」  純平と里緒の悲痛な叫びが、洞窟の通路にこだまする、その目の前で。トッコと豹は、もつれあうようにして海面にダイブした。  ざぶうぅぅぅぅぅぅん……!! 「わあああああ、トッコ?!」  純平たちは洞窟の出口辺りまで来て、トッコと豹が飛びこんでいった海面を見つめた。その辺りはもう、深さが数メートルはあろうかという場所だ。目を凝らしても、そのまま沈んで行ったトッコと豹の姿は見えない。 「どうする、俺たちも飛びこむか? いや、飛びこんでも何も出来ないか……」  航己が海面と純平を交互に見比べながら、どうすべきかと悩んでいた。純平も、すぐに飛びこんでトッコを助けた方がいいかとも思ったが、特に武器になるようなものも持っていない以上、豹に抵抗するのは難しいだろう。スタンガンも、水中で効果を発揮できるかといったら、疑問が残る。  ただ唯一、「希望」が持てることといえば……。  トッコは、「水中で5分近く、潜っていることが出来る」ということだ。
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