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 それは純平も実際に確認しているし、大黒が自慢げに語ったことでもある。それに比べて豹の方は、いくら獣とはいえ、水中でそこまで耐えられるかはわからない。つまり、水中で逃げおおせれば、「トッコの勝ち」だ……!  恐らくトッコもそう考えて、あえて豹の注意を自分の方へ向け、海中へ飛びこむという「作戦」を取ったのではないか。そしてこの辺りの海中は、トッコが何度も潜っている場所だ。獰猛な獣相手に陸上では勝ち目がなくとも、海中でなら「勝機」があると。   後は、トッコの無事を祈るだけだ。海面に先に出て来るのが、豹になるのか、トッコになるのか。どうか、トッコであってくれ。どちらもそのまま、「潜ったっきり」なんてことには、ならないでくれ……!  純平たちは、祈るように海面を見つめた。その足元には、「ざぶん、ざぶん」と、波が押し寄せ始めている。満潮の時間が近くなり、洞窟の入り口付近も海水に浸り出したのだ。自分たちも、このままここにいるわけにはいかない。しかしせめて、トッコの無事が確認できるまでは。それはすでに、純平たちの「暗黙の了解」だった。  そのまま、重苦しい時間がどれくらい経過しただろうか。実際は数分だったかもしれないが、純平たちにはその数分が、永遠に続くようにすら感じられた。さすがにもう、助けを呼んだ方がいいんじゃないか。警察なりなんなりに、連絡した方がいいんじゃないか……? 純平がそう考えて、スマホを取り出そうとした時。
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