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ざばあああああっっっ!!
海面が勢いよく跳ね上がり、「何か」が海中から姿を現した。純平たちがいっせいに、その海面を注目すると。そこには、海面から顔を出し、純平たちに「にこり」とした笑顔を向ける、トッコの姿があった。
「トッコーーーー!!」
「トッコちゃーーーーん!!」
純平たちは口々にトッコの名前を呼びながら、足元の海面に歩み出し。トッコも海面を「すいーーっ」と泳いで、里緒の前までたどり着くと。めいっぱい両腕を差し出した里緒の、その腕の中に抱かれた。
「よくやった、よくやったぞトッコ!」
航己は興奮してそう叫び、里緒は抱きしめたトッコの頭を、いとおしそうに撫でている。よく見ると、トッコのむき出しの腕や足には、擦り傷ではない「引っ掻かれたような傷」が、何本も付いている。やはりいくらかは、豹の「攻撃」を受けたのだろう。純平も青山と共に、ほとんど泣きそうになりながら、その姿を見つめていた。
そこでトッコが、里緒に何事かを囁いた。里緒は「うんうん」と頷いて、これまでと同じように、トッコの言葉を「通訳」した。
「トッコちゃんね、前にこの辺に潜った時に、海底の岩にツタみたいなのが絡まってるのを見たことがあって。そこへ上手く豹を誘い込んで、豹の足にツタを絡ませたんだって。トッコちゃんにすると、あの豹も自分と同じように『痛み』を受けて来た同士だから、可哀そうだとは思ったけど。あたしたちを助けるために、仕方なかった、って……」
そう言い終えた里緒は、「ありがとう!」と叫ぶと、改めてトッコの体を「ぎゅっ!」と抱きしめた。トッコは、豹を「死なせてしまった」せいなのか、里緒の腕の中で、目に涙を浮かべている。
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