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 何か自分でも戸惑いながらそう言った航己の言葉を聞いて、純平はとてつもなく胸が熱くなり。それまでこらえていた想いを、涙と共に吐き出してしまった。 「……ごめん。本当にごめん。何を言っても、許されることはないだろうけど。こんなことになるなんて……こんなはずじゃなかったんだ。嘘じゃない。でも、こうして企業の代表に名を連ねて、町に帰って来たのは紛れもない事実だ。だから、どう責められても仕方ないって、覚悟してる……」  今や純平は傍から見てそれとわかるくらいに、両目から涙をこぼし、泣きじゃくっていた。いま言ったことは純平の本音であり、青年団の代表となった航己と顔を合わせたら、それこそ一方的に責められ、なじられることを覚悟していた。だから皆と顔を合わせることがないよう、皆が働いている時間内に、ホテルまで帰ろうと思っていたくらいなのだから。  だが、目の前にいる航己は。一度はキツい皮肉を言いながらも、純平にも事情があるはずだ、俺や町を裏切るような奴じゃないとまで言ってくれている。その有難さに、暖かさに。こらえきれず、涙を流してしまったのだった。 「おいおい、大の大人が人前で泣くなよ。俺がお前を一方的にいじめてる、悪者みたいじゃんか。なあ?」  航己はそう言って、一緒にいた若者たちに向かって笑った。彼らは恐らく、青年団のメンバーなのだろう。それで純平もようやく、「はは、そうだな……すまん、泣いたりして」と、両手で顔をゴシゴシとこすり、「にこり」と航己に微笑んだ。
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