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 ある休日の夕方過ぎ、2人で防波堤沿いから岩場に続く道を歩いている時、里緒の被っていた日よけの帽子が海風に飛ばされ、海面に落ちてしまった。「あー、どうしよう」と困った顔で言う里緒に、純平はいいところを見せようと思い、「取ってくるよ」と言い残し、岩場へと降りていった。 「気を付けてね」という里緒の言葉を背中に受けながら、純平は慎重に岩場をつたい、帽子の落ちた位置まで近づこうとしたが。帽子は波にさらわれ、岩場を越えた位置まで流されてしまった。これはさすがに無理かも……と純平が思ったその時、波に乗った帽子が山裾の崖縁に叩きつけられそうに見えたが、なぜか帽子はそのまま「すっ」と姿を消してしまった。  純平は、あれ? と思いながら、更に慎重に岩場を進み。そして思い切って、ズボンの裾を膝上までたくしあげ、海の中へと入ってみた。岩場が切れたところからは水深が深いので、急に海の中へとドボン! ということにならないよう、気を付けながら進んで行くと。道路を背にして岩場から海へと続く場所とは違い、山裾沿いに進めば、案外水深は深くないことに気付いた。これならもう少しこのまま行けそうだぞと、尚も慎重に、足元を確かめながらザブザブと歩き。山裾の崖縁に、「亀裂」のようなものがあるのを発見した。  たぶん帽子は上手い具合に、あの亀裂の中に流されたんだな……と思い、山裾沿いに近づいてみると。その亀裂は思ったより大きく、どうやら洞窟のようになっているらしい。 「ねえ、大丈夫?」  海の中に太腿まで浸し、どんどん崖縁の方へ歩いて行ってしまう純平を心配し、里緒がそう声をかけてきた。純平は振り返って「ああ、大丈夫だ。それより、凄いものを見つけたよ」と里緒に答え。腰の上まで濡らしながら、洞窟の入口までたどり着いた。それは本当に崖縁に出来た大きな裂け目ではなく、ずっと奥まで続いている洞窟になっているようだった。  
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