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 かなりの時間といっても、たかだが1,2分のことではあるが。10代前半に見える少女が「潜水」している時間としては、相当に長い。いや、長過ぎる。純平はついさっき感心したのとは逆に、「もしかしたら、水中で溺れているのかも」と急に心配になってきた。  飛び込んでからの正確な時間を計っていたわけではないので、確かなことは言えないのだが。「時間が経っている」と気付いてからは、間違いなく1分以上が経過している。だとしたら、すでに少女は5分近く、「海中に潜ったまま」という可能性も……?  宿泊先のホテルで薄手のシャツにジーンズというラフな格好に着替えていた後だったので、このまま飛び込んで少女を探してみようか、いや近隣の民家や店まで行って、助けを呼んだ方がいいか……? と、純平が迷っていると。先ほど飛び込んだ辺りの海面から、少女がやにわに「ざぶんっ!」と顔を出した。  純平は足を滑らせないよう気を付けながら、少女の近くまで駆け寄り、無事なのかどうかを確かめようとしたのだが。そこで初めて、自分に近づいて来た青年の姿に気付いた少女は、ケロっとした表情で「にこり」と笑い。慣れた動作で岩場に上がると、再び海面の方に向き直り、もう一度「飛び込む体勢」に入ろうとした。 「だ、大丈夫なの?!」  そこで純平はようやく、少女に声をかけた。少女は純平の方をチラリと見ると、「ふふふっ」と笑い。先ほどと全く同じように思い切りよく、海中に飛び込んで行った。  純平は慌ててスマホを取りだし、少女が飛び込んでからの時間を計ることにした。時計アプリの立ち上げにやや時間がかかったので、それも加えたタイムを考えなければならない。時計が表示されるまで10秒から15秒ほどかかったとすると……純平はスマホと少女が飛び込んだ海面を、何度も見返した。もうすでに、1分は過ぎている。確か海に潜るのが専門の海女さんでも、そのくらいが限度ではなかったか。ただ息を止めているだけでなく、海中に潜って呼吸せずにいるのは相当にシンドいはずだ。
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