第8章 初めての秘密の痛み

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「もう一度キスして」 「そうだな、キスでも十分いける」  多香子の方から求めていった。お互いに貪った後、晴久は首筋をなぞると胸元で強く吸った。思わず吐息を漏らすと、晴久が睨んだ。 「ごめんなさい」  一度抱きしめると、席につくのを促すように腰に手を回した。 「もうそろそろ始まるから、席につくか」  そうして、席につくと飲み物を注文した。酒の飲めない晴久は烏龍茶、多香子はノンアルコールのシードルを頼んだ。飲み物が置かれると、そこで代金を払った。  その頃にはステージは暗くなり、女が一人座っていた。すると男が出てきて、赤い縄を全身に這わせ始めた。表情のなかった女の目が光りだして、情念のようなものを感じさせていた。亀甲模様の赤い縄が女の肌に食い込むと、その胸の膨らみがはっきりするようになった。両手をくくられて、柱に吊るされると、鞭を持った男と交代していた。
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