第7章 再構築の前に

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 ハイボールや焼き鳥等を注文すると、ため息混じりに正弘が口を開いた。 「やっぱり俺たち駄目か」 「ごめんなさい。夏川さんとよりを戻すことになったし、それに」 「それにって」 「正弘の思っている女じゃない。もっと欲しい物に貪欲なのかもしれない」  まっすぐに正弘の目を見て言った。自分の本当の姿は決して清純な女ではない。多香子は男から得られるものだけでは、満足しない女になっていた。 「他にも付き合っている人がいるって」 「そう。言ってみれば身体が先の関係」 「いつからなんだ」 「……。この前京都に行ったとき」 「そうか。俺じゃ満足できなかったということか」 「……。ごめんなさい」  頭を下げて謝っていた。これしかできない。 「しょうがないよ。こうして会って話をしてくれた。多香子の誠意だろ。俺はこれで満足しなきゃいけないな」  正弘は真摯に受けてくれた。嫌いにならずに良かったとおもった。 「ありがとう。この後は」 「気が向いたとき、あってくれればいい」 「ありがとう。それじゃぁ帰るね」 「金はいい。何かあったら奢ってもらうから」 「ありがとう」 「今日は素直なんだな」 「うん。それじゃ」  頼んだハイボールは飲んで、多香子は席を立った。  寂しさも幾分あったが、ここの猥雑なネオンに置いていこうと思った。風は生温くて体にまとわりついて、まるで何かが縋っているようだった。
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