第7章 再構築の前に

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 多香子はデパートの外商に出向いたことを思い出した。晴久の強みにこれ以上触れられたくなかったので、話題を別のものにした。 「史くんも十分かっこいいよ。白いシャツが似合うって重要だよね」 「持ち上げても、何も出ないからな」 「お弁当買ってもらうだけで十分だけど。そうだ、ポップコーンも買って」 「わかったよ」  史之は近くにあったワゴンで、多香子の希望通りキャラメルポップコーンを買って戻った。 「こういうのってたまに食べたくなるんだよね」  多香子が笑いながらポップコーンをつまんだのを見て、史之も笑っていた。 「食べる? 甘いけど」 「キャラメルはいいや。席に行こう。飛ばされないようにな」 「はい、わかりました」 「元気でよろしい」  二人で笑い合っていた。試合は日本を代表とするエースと新進気鋭の投手による投手戦になっていた。それでも、どうにか少ないチャンスをものにして千葉が勝利を収めていた。 「やっぱりかっこいい」  車に乗った多香子が叫んでいた。 「どっちが」  笑いながら史之が聞いていた。 「両方とも」 「君は本当に欲張りだ」
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