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多香子はデパートの外商に出向いたことを思い出した。晴久の強みにこれ以上触れられたくなかったので、話題を別のものにした。
「史くんも十分かっこいいよ。白いシャツが似合うって重要だよね」
「持ち上げても、何も出ないからな」
「お弁当買ってもらうだけで十分だけど。そうだ、ポップコーンも買って」
「わかったよ」
史之は近くにあったワゴンで、多香子の希望通りキャラメルポップコーンを買って戻った。
「こういうのってたまに食べたくなるんだよね」
多香子が笑いながらポップコーンをつまんだのを見て、史之も笑っていた。
「食べる? 甘いけど」
「キャラメルはいいや。席に行こう。飛ばされないようにな」
「はい、わかりました」
「元気でよろしい」
二人で笑い合っていた。試合は日本を代表とするエースと新進気鋭の投手による投手戦になっていた。それでも、どうにか少ないチャンスをものにして千葉が勝利を収めていた。
「やっぱりかっこいい」
車に乗った多香子が叫んでいた。
「どっちが」
笑いながら史之が聞いていた。
「両方とも」
「君は本当に欲張りだ」
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