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史之がふとこの関係に一言言いたくなっていた。
「なぁ、多香子。いつになったら許してくれるんだ」
「何を。許すって」
「共寝。山口旅行でもお預けって酷くないか」
「その話は。いまはちょっと」
まさか晴久の返事を待っているとは言えなかった。史之とは最近では週一位で会っていて、自分の中では不公平だと感じていた。もう諦めて、このまま行くのも、仕方ないかなと思わざるを得なかった。
「多香子とこうして話をして、期待するなってほうが難しいだろう」
「わかった」
「じゃぁ、キスしていい?」
少し、晴久についての怒りがあって、ついそのままいってしまった。
「嫌、違う。それなら別れよう。もう本当に他人になろう」
「まって、それなら、急がないようにするから」
史之は慌てて、多香子をなだめようとしていた。何がそんなに気に触るのかよく分からなかった。その雰囲気を感じて、多香子が笑いながらささやいていた。
「史くんは優しいよね」
それでも流石に、史之の心をもてあそぶようで気が引けてきて、帰り際の挨拶には唇を求めあった。
「ごめんね。何か変わってしまった気がして、今までみたいにできない。史くんにしばらく甘えるかもしれないね」
「始めからやり直しだと思っているから、待ってるよ」
「ありがとう。それじゃまた」
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