第8章 初めての秘密の痛み

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 晴久との約束の日はあっという間にやってきた。待ち合わせの駅に着くと、行ったり来たりと落ち着かない男性が気になった。それとなく近付くと、ぶつかりそうになった。お互い顔を見合わせて、笑いころげてしまった。 「どうかしたの。こんなに落ち着きのない人とは」 「君に関わるとこのざまだ」  晴久は笑いながら言った。心のなかでは「この責任を取ってもらうけど」と続けていた。 「そう、あまり時間がないんだ。早く車に乗って」  慌てた様子のまま、多香子の腰に手を回すと、車へといざなった。そのまま車を自宅へと着けた。 「お姫様、ようこそお越しくださいました」 「凄い。戸建てなの」 「頑張っているんだよ。他に使うところもなかったから」  ぼうっと立っている多香子を家の中へとエスコートしていき、応接間としている部屋に入っていった。
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