171人が本棚に入れています
本棚に追加
/278ページ
晴久との約束の日はあっという間にやってきた。待ち合わせの駅に着くと、行ったり来たりと落ち着かない男性が気になった。それとなく近付くと、ぶつかりそうになった。お互い顔を見合わせて、笑いころげてしまった。
「どうかしたの。こんなに落ち着きのない人とは」
「君に関わるとこのざまだ」
晴久は笑いながら言った。心のなかでは「この責任を取ってもらうけど」と続けていた。
「そう、あまり時間がないんだ。早く車に乗って」
慌てた様子のまま、多香子の腰に手を回すと、車へといざなった。そのまま車を自宅へと着けた。
「お姫様、ようこそお越しくださいました」
「凄い。戸建てなの」
「頑張っているんだよ。他に使うところもなかったから」
ぼうっと立っている多香子を家の中へとエスコートしていき、応接間としている部屋に入っていった。
最初のコメントを投稿しよう!