第8章 初めての秘密の痛み

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「今日は和服を着てもらいたいんだ。着付けはお手伝いさんがやってくれる。ただ、裸で知らない人の前に立つのも無理があるだろうから。ここで、肌襦袢をきてもらおうと思ってね」 「裸でって、下着は他には」 「そうだ、ショーツはこれで。ブラジャーは駄目だ」  そう言って、さしだされたTバックにはきかえ、肌襦袢に着替えた。腰紐をどうにか結ぶことができてよかった。髪の毛も一応アップにして、簡単にアクセサリーで留めた。晴久はそんな多香子を見つめていて、胸元の合わせを直した。 「あかねさん、こっちを頼む」  廊下に顔を出して、お手伝いさんを呼んでいた。テーブルの上にはこの前に買った、数本の紐と着物と帯、足袋と巾着袋が置かれていた。先に足袋は履いておいた。あかねさんとよばれた女性が入ってくるとそれらを持ってきて、手際よく着付けていった。 「帯はこの矢の字結びが良いな。座席に座るからじゃまにならないように」 「わかりました」  またまた手際よく帯を締めると、出来上がったようで、失礼しますと下がっていった。晴久は遅くまですいませんと声をかけていた。返っていくのを確認して、戻ってくると多香子に声をかけた。
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