第8章 初めての秘密の痛み

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 晴久が準備の整った多香子に声をかけていた。 「僕らも出かけるぞ」 「はい」  そういって、歩幅の出ない着物に苦労しながら、後をついていった。 「すごいなぁ。和服だと気の強さがこんなに緩和されるんだ」 「慣れていないだけ。口だけなら変わらないよ」 「たしかにそうだった」  ケラケラと楽しそうに晴久が笑っていた。また車を出して、ショーの会場に向かった。  今回はライブレストランと言うかステージと客席とちょっとしたテーブル、そして奥にも何かあるらしく人の動きがあった。  多香子は好奇心で一杯になると、キョロキョロしだした。人通りのないところに行くと晴久が話しだした。 「今日は絶対に離れないでくれ。人身売買組織にまわされるぞ」  流石に冗談だと思った多香子は、おかしそうに笑った。しかし晴久は、逆に表情を固くした。 「今日のに連れてくるべきか迷ったけど、来るべきじゃなかったかな」 「どういう事」 「あの奥では秘密のことが繰り広げられてる。パートナーの交換だ」 「つまりは。そういうこと」 「これは、君の想像通りとしておこうか。あのカーテンの奥ではそういう事がOKということになる。連れて行かれないようにするんだな」
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