2.太刀花闘兵衛スーパーヒーロー事務所

2/2
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
 三階に部屋をもらった。  六畳一間だが、荷物はバッグがひとつだけ。布団を敷く広さがあれば、寝るに不足は無い。  住むところが無い身だから、文句が出るはずもない。 「超人・・・そうなのかなあ」  アキラは大の字に寝転がり、自分が何なのか自問してみる。答えは・・・分からない。  退院したら、住むところも仕事場も無くなっていた。ここにいれば、雨露はしのげて、飯の不自由は無さそうだ。  すこしまどろんだ。 「仮登録完了、これできみも超人だ!」  闘兵衛が大声で入って来た。  目をこすり、アキラは起き上がる。 「かり?」 「超人の活動には国家予算がからむ。なので、手続きは複雑、かつ厳正だ」 「国家予算が、ですか」 「まず、仮登録だ。その上で、魔物と戦って実績を積み、身体検査を経て、正式に国家登録上の超人となる。きみ自身に国家予算が付く。無論、我々もマネジメント料をいただくが」  闘兵衛はアキラを部屋から連れ出す。  階下に行った。いくつかのアスレチックマシンやマットがあり、超人が体調を整えるジムになっていた。  ロッカーを開ければ、超人のためのスーツが並んでいた。ヘルメットやゴーグル、手袋にブーツ、小物もいっぱいある。 「さあ、好きな物を取りたまえ」 「誰かが使った物ですね?」 「う、うむ・・・」  アキラの問いに、闘兵衛の顔が曇った。 「ここと同じような事務所は、他にもあるのでは?」 「ジョニー事務所は有名だな。SWAPとかOCAMA男子とか、複数人の超人戦隊を作っている。怪物退治の専門家としては、津武羅谷プロダクションも有名だ。一時、わたしも世話になった」 「やっぱり、あるんだ」 「当、太刀花闘兵衛スーパーヒーロー事務所には、前は石丸強志くんがいた。彼は今、永井豪氏の事務所で活躍している」 「けっこう、人の移動があるんですね」 「まあ・・・ね」  はあ、はため息した。ヒーローと言えど、あるいは・・・ヒーローだからこそ、人間関係は難しいのかもしれない。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!