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3.竜八幡神社
早朝、アキラはシャワーを浴びた。
ロッカーから服を選んだ。白いミリタリールックな服を着込む。
鏡に向かって、がっかり。低い鼻、眠そうな目、ゆるんだ口元・・・猫背にがに股。自分で見ても、ヒーローらしくない。
1階に降り、スナック・網井郷でモーニングセットのトーストとコーヒーを腹に入れた。
智恵子がアキラの服装を品定めする。
「まあ・・・初めてだし、そんなものかな。でも、これをすれば、少しはヒーローらしくなるわ」
と、アキラの首に赤いマフラーを締めた。
「アメリカなら黄色いリボンをするところね」
「黄色いリボンをして、インディアンの村を襲って、男からは頭の皮をはいで、女なら乳房を切り取って、皆殺しの証拠として・・・」
「19世紀までは、キリスト教に改宗しないインディアンは害獣同然と、駆除の対象だったようね。州によって、賞金を出す証拠は違ったみたい。異教徒を殺す騎兵隊は、ヨーロッパから移民してきたキリスト教徒にはヒーローだった」
「インディアンは報復として、白人を襲って頭の皮を剥ぐようになって・・・」
ちょっと不穏な歴史談義をしてしまった。
うむうむ、智恵子はアキラの思考能力に肯いた。
闘兵衛が現れた。朝から暑苦しいほどの笑顔だ。
「おおっ、ヒーローらしい出で立ちになったな。白と赤、シンプルさが良いぞ。初めからアクセサリー満艦飾な状態は良くない」
「いや、でも、こんなブ男じゃ、ヒーローにならんでしょ」
アキラは自分を指して苦笑いする。
「魔物退治の実績をもってヒーローになるのだ。さすれば、人の見る目が変わる。また、実績がきみ自身を変える。生まれながらのヒーローはいない、ヒーローは戦いの中で育つのだ」
「のだ・・・」
闘兵衛の暑さは不動である。
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