幸福に浸りながら望む貴石※

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              「さて…反省の意を示しましょうか? とはいえ、一応俺の身勝手にも、理由はあるのですよ」と前置きした上で、やや申し訳なさそうな顔をするソンジュさんは。 「…先ほどは、大変失礼いたしました。――これでも申し訳なく思ってはいます。…また、モグスさんにそうしてくれるよう指示したのも俺ですから――ごめんなさい。」   「……、…」    ソンジュさんは、うっすらと余裕のある笑みを浮かべてはいるが、その謝罪はとても誠実さを帯びている、丁寧な弁舌であった。――まして彼は、まるでこれまでの僕に合わせたかのように“ごめんなさい”と言ったのだ。…ソンジュさんの小さな気遣いに気が付き、僕は少なくとも彼にちょっとしたぬくもりを感じた。  そしてソンジュさんは、「ですが」と冷静に続ける。   「…そもそも…こればかりは俺たちの勝手な事情に違いないんだが、…九条ヲク家の者の家に入ってくる荷物は、念のため、事前に点検することが義務付けられているのですよ…」   「……あぁ…」    なるほど、と理解した僕は、ソンジュさんに軽く頷いて見せた。――すると彼もうむ、と神妙な顔をして頷き。   「…言うまでもなく、万が一危険物の持ち込みがなされないように、ということです。――現に今回も、プライバシーを侵害するGPSやら盗聴器なんかを、ユンファさんのスマホに仕込まれていましたからね…、その実、そうしたことを企む輩はあとを絶ちません。…」   「…………」    ソンジュさんの説明を聞くと、いよいよ僕は怒りなど一欠片もなくなってしまった。とても身勝手だとは言えないだろう。――さすがに理解できるからだ。  九条ヲクのみならず、ヲク家の人々は由緒正しい家柄というのに加えて資産家でもあり、また、それにともない国の重要人物であることも多い。  そうした人々ほど機密情報を握っている者もなかなかないわけで、また、その重要人物をおとしめることほど簡単に、自分の地位を上げる方法もないものだ。――ましてやアルファの人々は、生まれながらにして有能な上、見目にまで恵まれている。…天は二物を与えない…の逆をいく彼ら、そうともなれば多くの人にとって、アルファが妬み嫉みの対象になり得るのは、残念ながら当然とも言えてしまうことだろう。    また、そうした九条ヲク家に生まれたソンジュさんのそれらは、すなわち正当防衛ともいえる行為だったのである。    ソンジュさんはその凛々しい眉に申し訳なさを滲ませ、さらに。   「…また、貴方を疑ったようで申し訳ないのですが…――そのときに原則として、事前に、荷物の持ち主に点検を申し出ることはできません。…不意打ちで検査をしなければ、発見が遅れてしまうパターンがあるためです。…」   「…あぁ、…いえ、そういうことなら」    それは仕方がないことだ。  僕は真剣な気持ちで頷いた。――ソンジュさんもまた軽く頷いて、真摯な眼差しを僕へ向けてくる。   「…ええ。ですので、モグスさんは九条ヲク家のしきたりにならい、ただ仕事をなさっただけなのですよ。――彼のことは殊に、何とぞご容赦くださいますよう。」    彼には軽く頭を下げられたが、「もちろんです」…そう答えた僕はそもそも、もうソンジュさんに対してもそう怒っているわけではない。――事実、僕はそういった企みなど頭の隅にもなかったわけだが、…少なくともケグリ氏には、そういった悪巧みの思惑があったようだ。    むしろよかったんじゃないか。――何もそのあたり明るくない僕なんかじゃ、それこそ彼らに点検されるまで、自分のスマホに仕組まれたGPSや盗聴の機能を知ることもなかった。……そんな僕では、それらを見つけることなどできず、自発的に気が付くこともなかっただろう。  下手すれば、それが見つかったとき、僕が疑われ、その犯罪行為に加担したと見なされてしまったかもしれないのだから。      
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