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翌週末金曜日、僕はママさんのスナックに顔を出した。
お店にはママさんと唯織さんがいて、僕はカウンターに案内されて座った。
唯織さんは店の奥で、お客様を迎え入れるための準備をしているようで、ママさんが僕の席で話をしてくれた。
僕はママさんに気になることを率直に話そうと心に決めていた。
「ママさん、僕は幼い頃に東京の児童養護施設に預けられていて、里子に出されたみたいです。
今の僕の育ての親は、ここ静岡市内に住んでいます。
父は5年前に他界していて、今は母と2人で生活しています。」
ママさんは僕の話を真剣に聞いてくれているようだった。
「僕の産みの親は、経済的に僕を育てることが難しかったようで、僕を児童養護施設に預けたみたいです。
その母の名前は『香坂 恵子』という名前のようです。」
僕が話すとママさんの目から涙がこぼれ落ちた。
「優心さんが先週お店にいらっしゃって名前を聞いた時に、私の息子と同じ名前だと思ったんです。
でも、まさかここ静岡にいるなんて思ってもみなかった…
私の名前は『香坂 恵子』です。」
ママさんは正直に話をしてくれた。
「僕はママさんに出会えて嬉しいです。」
僕が正直に思いを伝えるとママさんが、
「優心さん、私は何と言ってお詫びをしたらいいのか…」
と言ったので僕は、
「僕はママさんのことを恨んでいませんよ!
僕は里親の父と母に大切に育てられて、幸せな人生を送っています。」
と答えた。
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