真実を映し出す水晶玉

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翌日土曜日、僕は水晶玉を渡してくれた老人に会いたいと思って車で富士山の青木ヶ原に向かった。 青木ヶ原の樹海入口に到着し駐車場に車を置いて、歩いて洞窟に向かった。 洞窟に入って僕は持ってきた懐中電灯を頼りに奥へ奥へと入っていくと、少し明るい広い空間にたどり着いた。 僕は以前会った老人はいないのかと、辺りを見まわした。 しかし、老人が現れることはなかった。 僕は持ってきた水晶玉をそっと岩の上に置いた。 すると水晶玉が光りはじめて僕が水晶玉を覗き込むと、以前会った白髪で長い白ひげの老人の顔が現れた。 その老人は笑顔で頷いていたようだったけれど、少しすると水晶玉の中に霧がかかって、少しずつ老人の姿は見えなくなっていった。 そして水晶玉はさらに強く光り輝いて、まぶしい光の中につつまれたと思ったら光は少しずつ和らいでいってやがて光は消え、そこに水晶玉はなかった。 僕は老人に水晶玉のことを聞きたかったけれど、もう老人に会うことはできないのだろうと思った。 心の中で僕は、産みの母に会わせてくれた老人に感謝した。 僕は水晶玉のおかげで2人の母ができたような気がして、とても幸せな気持ちになった。
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