真実を映し出す水晶玉

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自宅に帰った僕は、2階の自分の部屋に入って机の上に水晶玉を置いてじっと見つめた。 しかし水晶玉は単純なガラス玉のようで、水晶玉の向こう側の僕の部屋の壁が見えるだけだった。 「ごはんだよ!」 1階の母親から声をかけられて、僕は1階でテレビを観ながら母と夕食を済ませて、少し休憩してからお風呂に入って2階の自分の部屋に戻った。 部屋の明かりは消していて暗かったけれど机の中央が光っていて、部屋全体がぼーっと薄明りに灯されたような状況だった。 僕は机の中央で光っている水晶玉を覗き込むと、水晶玉の中は霧がかかったような状態だったけれど、少しずつ霧がなくなっていって街の景色が映し出された。 僕が水晶玉をじっと見つめていると着物を着た50代くらいの女性の姿が映し出され、その女性は夜の街中を歩いているようだった。 よく見ると歩いている女性の後ろに静岡駅が見えて、女性は飲み屋街に入って行くようだった。 しばらく歩いた女性は、 『スナック 涼風』 と書かれた看板の店に入っていったようだった。 スナックの中に入った女性は開店準備をしているようで、少しするとスーツ姿の少し若い20代くらいの女性が入ってきて、 「おはようございます。」 と挨拶しているようだった。 その女性も開店準備を手伝い始めたようで、ここで水晶玉の中に霧がかかって、少しずつスナックの店内と女性の姿は見えなくなっていった。 僕は水晶玉の中に現れた2人の女性が誰なのか、まったく身に覚えがなく、 『スナック 涼風』 という店にも行ったことはなかった。 この水晶玉は真実を映し出すということだったけれど、何か僕に関係があるのか…考えてもわかるはずもなかった。 僕は翌週末の金曜日、仕事を終えてからこのスナックに行ってみることにした。
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