真実を映し出す水晶玉

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自宅に帰って2階の自分の部屋に入ると、部屋の明かりは消えていたけれど机の中央が光っていて、部屋全体がぼーっと薄明りに灯されたような状況だった。 僕は机の中央で光っている水晶玉を覗き込むと、水晶玉の中は霧がかかったような状態だったけれど、少しずつ霧がなくなっていって夜のどこかの施設の光景が映し出された。 水晶玉に映し出された光景は施設の玄関のようで、僕が水晶玉をじっと見つめていると20代くらいの女性が玄関を入ってきて、赤ちゃんが眠っているベビーバスケットを玄関のフローリングの中央に置いていた。 その女性は赤ちゃんの顔を見て涙を流しているようだった。 少しすると女性は名残惜しそうに赤ちゃんが眠っているベビーバスケットを置いたまま玄関を出て施設を出ていってしまった。 女性が玄関を出るときに少し正面の顔が見えて、僕はその顔に見覚えがあるように感じた。 その後玄関の赤ちゃんが泣きだして、施設の職員らしい女性が玄関に来て、赤ちゃんがいることに気が付いたようだった。 施設の職員らしいその女性は慌てて玄関の外に出て辺りを見まわしてから玄関を入って赤ちゃんの様子を見ているようだった。 そのうちもう1人の施設の職員らしい女性が来て、赤ちゃんと一緒に置かれている手紙に気が付いて読み始めた。 その手紙には赤ちゃんをお願いしますという言葉と赤ちゃんの名前が書かれていた。 僕はその赤ちゃんの名前を見て驚いた。 その赤ちゃんの名前は『優心』で、僕の名前と一緒だったからだ。 ここで水晶玉の中に霧がかかって、少しずつ施設の玄関と2人の女性の姿は見えなくなっていった。 僕は落ち着いて立ち去った女性の顔を思い浮かべると、その女性の顔は若き日のスナックのママさんのような気がしてきた。 水晶玉は僕に何かを伝えようとしているに違いないと思うようになった。
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