5人が本棚に入れています
本棚に追加
女性は『はやく、はやく、はやく、はやくはやく、はやくはやくはやく、はやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやくはやく』と目のない顔をむけてこちらへと走り出した。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」と悲鳴を上げて走り出す俺達。
来た道を戻り、急いで廃工場から外へと出ると、友達が駆け寄ってきた。
そして友達は笑いながら俺達に言う。「入ってすぐに悲鳴を上げて出てくるなんて怖がりすぎだろ」
廃工場内に入り、ゆっくり進んでいた俺達二人は、屋上まで行き女性を見た。
いくら早いとはいえ十五分は経過していたはずだ。
二人で話してもだれも信用してくれない。
確かにあの屋上に女性がいたのだ、と暗くて見えない屋上を指さしたその時、全員の視線が屋上へと集まる。
暗くて見えないはずなのに、そこには無数の人影が見えた。
そして、『どこへいった~!!』と低音の叫び声が聞こえてきた。
全員がそれを聞いて恐怖を感じ、悲鳴を上げて走り出し、廃工場から逃げ出した。
その廃工場で昔何があったのかは詳しくは知らない。
あの人影や声、あの女性が一体なんなのかはわからないが、それ以降俺達がその廃工場に近づくことはなかった。
それから月日が経ち、肝試しに行ってから行方不明になった人がいると噂を聞いたが嘘か誠かは知る由もない。
その噂の後、廃工場はすぐに取り壊された。
1話目:完
最初のコメントを投稿しよう!