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そこには誰もおらず、エレベーターのボタンを押していた男もいなくなっていた。
誤作動起こしてしまったんですねと言い、気を取り直して2件目へと向かう。
2件目は7階建ての6階の部屋で、1件目とは違い、エレベーターを降りてすぐの部屋だ。
車を降りてエレベーターに乗り、6階へと向かう。
2階,3階,4階,と上がっていくエレベーター。
5階を通り過ぎるときにエレベーターの中から見た光景にギョッとする。
1件目にいた男が立っていたのだ。
夫婦はどんな部屋だろうと話しており、それを見てはいなかった。
自分だけが見たこともあり、気のせいだと思いたかったが間違いなくさっきの男だった。
嫌な予感がする…。
そんな不安な気持ちの中、エレベーターは6階へと到着した。
6階には誰もおらず、気にしないでいようとそのまま部屋の鍵を開けて部屋へと入った。
同じようにブレーカーを上げて電気をつけ、案内していると、【ピンポーン】とインターホンが鳴り響く。
夫婦と3人で顔を見合わせ、また?と怪訝な顔で玄関を見つめる。
1件目には音だけのインターホンだったが、2件目のこの物件はモニターが付いており、確認してくるので部屋を好きに見ていて下さいと声を掛け、モニターを確認しに行った。
モニターには誰も映っていなかった。
誰も映っていなかったのだが、【ピンポーン】と再びインターホンが鳴り響く。
何故?と思った瞬間、水の流れる音が聞こえ、それと同時に夫婦の悲鳴が聞こえてきた。
急いで夫婦の元へ駆けつけると、脱衣所からお風呂場を指さし震えている夫婦が目に入る。
大丈夫ですか?と声を掛けて指さしている風呂場を見てみると、人の形をしたシミが目に入った。
その時夫婦が呟いた言葉は「家にあるシミと同じシミがある」だった。
確かに人の形をしてはいるが、モヤがかかったような滲んだシミに見える。
風呂場はハウスクリーニングがまだだったんだなと思い、それを伝える。
夫婦の顔は強張ったままでその場を動こうとしなかった。
ここにいても仕方がないですし次に行こうと提案すると、夫婦は頷き動き出す。
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