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エピソード12:玄武×サンレン
「しかし、こういう時に限って敵は来ないもんだな・・・」
ガランとした校舎内で本間先輩が呟く・・・
星降学園はとてつもない被害を受けたため臨時で休みになった。
表向きは『日曜日に行われた工事で、ガス爆発が発生し、校舎が使えなくなった。』という扱いとなっており、少し離れた場所に急ピッチで新校舎が建てられることになった・・・
「そもそも、カモフラージュとして学校に本部を設置したのはリスクがありすぎた・・・早めに対策を立てておきべきだったな・・・」
大ちゃんは反省の色をにじませながらそう言った。
これで少なくとも生徒が被害に遭うことがほぼなくなった。
私達は本部である旧校舎の防衛を最優先で固め、レムリア帝国の兵士たちを迎撃するという作戦に切り替えたのだが・・・
冒頭のようなありさまである。
「まあ、頻繁に来られても困るからな・・・ここはゆっくり待つとしますか・・・」
そう言って大ちゃんが伸びをした直後だった・・・
ビービービー
本部に警告音が鳴り響く。
「未確認の大型移動物体の反応あり!その数2・・・」
モリーがパネルの文字を読み上げる。
その直後、パネルに画像が映し出されたが・・・
「ウサギとカメ??」
思わず私は声に出してしまった。
そう、ウサギ型のロボットとカメ型のロボットがこっちに向かって来ているのである。
そして旧校舎に到着するなり、ウサギ型ロボットはスピーカー越しにしゃべり始めた。
『ははは、裏切り者の諸君!二拠点同時攻撃はどうだったかな!』
聴いたことのない声だった。
「カー・チョウの方は失敗したようだったが、こちらは作戦成功したぞ!このシェン・ムー様の戦略は見事だったろう!」
「は?何その自慢?で、あたらめて性懲りもなくやられに来たってわけ?」
いてもたってもいられなくなった本間先輩が校舎のスピーカーを使って声を上げる。
「うるさい!これを見てもそういえるか?」
「なに?!」
「えっ!」
本部のモニター越しに映し出されたのは、亀ロボットの上に立たされたチャンチーであった!
「人質を取るつもり?ならば取り返すまで!!」
私は校舎を飛び出し校庭に向かう。
「お、おい!無茶するな!」
本間先輩は声をかけながら私を追いかける。
「チャンチー!今助けるから!」
「まて、伊藤!様子が変だ!」
本間先輩が警告を促すが、私はそれを聞かずカメロボットに近寄る・・・
すると・・・
「青龍の巫女!ここでとどめだ!」
普段のチャンチーからは想像できないような冷たい声でいい放つと
懐から黒い鍵を取り出した!
「それは"玄武の鍵"!まさかそのカメロボットは!」
大ちゃんのスピーカーからの声に焦りの色が混じる。
「封印解除」
チャンチーはカメに向かって玄武の鍵を当て、開ける。
「搭乗」
するとチャンチーは朱雀の中に取り込まれた。
「変形」
最後の言葉と共に黒いカメのロボットは人型に変形した。
『聞こえますかの問いかけが
空しく響く凍てつく大地
装甲蛇神サンレン×チャン
世界の終焉(おわり)を告げに降臨!』
「こ・・・こいつは・・・
終末の聖獣"玄武"・・・
なんで地井が巫女なんだ!」
明らかに動揺する大ちゃん・・・
「ほう、リサーチ不足だな。とっくに知っているものだと思ったのだが・・・この方は、皇帝陛下の血族・・・貴様らの同胞として囲っていることがわかった時には少々焦ったがな・・・」
シェン・ムーが皮肉たっぷりにいい放つ・・・
「くっ・・・厄介な・・・」
歯ぎしりをする本間先輩
「へ?」
状況が飲めず混乱する私
「とりあえず、召喚するぞ!」
私は青龍を、本間先輩は朱雀を召喚し、乗り込む!
「本間先輩どうしよう・・・」
私がチャンチーと戦う事をためらっていると
「青龍の巫女!死ね!」
冷たい声を放ち
サンレン×チャンがハンマーのような武器で殴りかかる。
「うわっ!」
私はとっさによけたが、威力がすざまじく、地面にヒビが入っている。
「相手は、地井だが倒すしかない!迷ってるならあたしがいく!」
そういうとグレン×カイナは鳳凰戟を構えた。
「朱雀の巫女か・・・貴様から始末する。」
「おいおい、地井・・・お前らしくないな~
いったいどうしちまったんだ~?」
軽口をたたく本間先輩だったが、その声は明らかに動揺していた。
「さーて、ウサギさん!あなたの相手は私よ!」
「ふん、青龍の巫女!仲間との直接対決を避けるためにこのシェン・ムー様に戦いを挑むか・・・いいだろう、その甘さ、地獄で後悔することだ。闘士形態!」
ウサギ型ロボットは例によって人型に変形した!
「このヒーター・ラビットをなめてもらっては困るな!熱線斬糸!!」
ロボットから突如熱気を帯びた糸が飛び出す!
「うわっ!ビックリした!」
とっさによける私!
「フンよけたか!これは想定外だ!」
うまくよけることが出来たが、周囲にあった木は熱を持つ糸に切断されていた。
「う・・・これは直撃するとやばいかも!」
「その通り、この熱線斬糸は熱によりあらゆるものを切断する!直撃すればいくら青龍とはいえバラバラになるぞ!」
「ひー!とはいえ、避けちゃえばなんともないもんね!」
「そう言ってられるか?熱線斬籠!」
シェン・ムーがそう言い放つと、上空から籠状の糸が降ってきた!
「うわっ!避けられない!」
「さらばだ!ダイナマイト×マリン!バラバラになれ!」
「ぎゃー!なんてね!青龍波!」
私がその言葉を放つとダイナマイト×マリンの胸元の龍のエンブレムから
大量の水が吹き出し、熱線に向かって飛んでいく!
すると、水が直撃した熱線は蒸気とともにただの鉄の線になってしまった!
「こうなれば、簡単に壊せるわね。」
私は剣で鉄線を振り払った!
「くっ!水を操る青龍とはやはり相性が悪かったか・・・
見事だ、ダイナマイト×マリン!」
「そういうこと!では今度はこっちが行くわよ!
水の力を我が手に!烈水斬!」
私はヒーターラビットに向かって剣を振り下ろした!
が!!
バキン!
「え?!」
当たったかと思った瞬間、手元にすごい衝撃が走った!
「け・・・剣が・・・」
なんと、龍尾剣が折れてしまった!
一瞬何が起きたかわからなかったが、
サンレン×チャンが真っ黒な盾で攻撃を防いだのだ!
「形勢逆転、死ね!ダイナマイト×マリン破皇鎚!」
「うわっ!」
すかさずサンレン×チャンがハンマーを振り下ろす!
「??」
直撃は免れないはずだったが、少しも衝撃が来なかった。
恐る恐る様子を見ると・・・
ギギッ
「う・・・動かない・・・」
突然サンレン×チャンはその場で硬直してしまっていた・・・
「やはり、負担がでかいか・・・まあ、今回はいいデータが取れた・・・ここは撤収する。」
落ち着きを取り戻したシェン・ムーは誰に言うでもなく言葉を放った。
「チャンチー!」
私の呼び掛けに応えることなく
ウサギとカメのロボットはいずこかに消え去り
その声はむなしく空に響いたのであった・・・
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