プロローグ

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プロローグ

 何か底知れない闇のような空気が流れていれば、警戒心が緩むこともなかったと思う。  ところがその日は会社の飲み会で、全身の毛穴という毛穴が緩みっぱなし。付き合っていた彼氏とも別れたばかりで、心も体も全て夜空の星に紛れて宙を漂いながら存在していた。 「今日は星が近いなあ」  星に手を伸ばすが届くはずもない。  居住するマンションの家賃は安いが、かろうじてオートロックつき。鍵を差し込み自動ドアを開けると、奥まで歩きエレベーターで一気に七階まで上がった。階段で上ったことはないが、たぶん上ったら死ぬ。もう学生とは違う。私は二十四歳という大人になっていた。
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