恋とお月様のダンス

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恋とお月様のダンス

「おねがああああああああああい!一生の、おねがあああああああああああああい!あたしと一緒に夜中の学校に忍び込んでたもれえええええええええええええええ!!」 「ワッツ!?」  突然、親友のカスミちゃんがそんなことを叫んだ。正直声がでかい。めっちゃうるさい。教室のみんなが振り返ったことに彼女は気づいているのかいないのか。 「うるせえよカスミ!近所迷惑だ、怒鳴るな!」  私より先に注意してきたのは、クラス委員のアサヒくんだった。カスミちゃんと同じマンションに住んでいるので、幼稚園からの幼馴染という少年である。暴走しがちなカスミちゃんを諫めるのは自分の仕事だと思っているのだろう。実際、小学校五年生になった今でも、カスミちゃんはまったく落ち着きがない。下手な男子より悪いことをやらかすタイプである。 「うっさい、アンタの声の方がうっさあああい!」  カスミちゃんも負けずとアサヒくんに言い返す。そして、さすがに放課後の教室で話すのはまずいと思ったのだろう。私の手を引っ張って廊下に連れ出す。  既に目立ってしまっているので、今更どこぞに隠れても遅いような気しかしないのだが。 「……カスミちゃん、一体何?今度はどんなスイッチふんじゃったの?私嫌だよ、巻き込まれるの。何かやらかしたいなら一人でやって。そして先生にでも警察にでも怒られて。一人で。うん一人で」 「三回も言う必要なくね!?そして冷たい!それでも親友か!!」 「地獄に一緒に引きずり込んでも許されるのが親友だと思ってるなら、いっかい辞書引き直してきなよ。私は嫌です。カスミちゃんが地獄に堕ちそうになったら容赦なく突き落として私だけ助かります」 「マジでひどくない!?」  まあ、私達の関係はこんなかんじ。容赦なく言い合えるのも仲が良いからこそ。  カスミちゃんはそんな私をうるうるした目で見つめて言ったのだった。 「そんなこと言わずに頼むよ、セナちゃん!あたしと一緒に……おまじないやって!恋愛成就の!」 「……ワッツ?」  つい二度目の“ワッツ”。私は目をまんまるにして、彼女に説明を求めたのだった。
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