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ラブレターは月明かりの下
マレンシー王国領土の、辺境の村。
そこには小さな丘があり、月が良く見える絶景スポットとしても知られている。
そして丘の上には、小さな赤いポストが一つ。――実は、このポストは普通に手紙を出すためのものではないという。
ポストの蓋は、自由に開け閉めができるようになっている。
運命の恋人へ――そう宛先に書いてラブレターを書いて出すと、次の月の綺麗な晩に運命の人から返事がもらえるというのだ。
「どうだ、どうだ?わ、我も手紙を書いてみたのだ!運命の恋人あてに!」
ロマンチストな魔王ノエル。彼は嬉しそうに部下に手紙を見せて言ったのだった。文面は以下の通り。
『私の名前はノエルです。
引っ込み思案なのと、同性が多い職場なのでどうしても出会いに恵まれません。
素敵な恋人ができることを夢見て、お手紙を送らせていただきました。
どうか運命のあなたに届きますように。
ノエル』
とてもシンプル。
そして、女性のように繊細で美しい字が並んでいる。ムキムキマッチョの美丈夫なのに字が可愛すぎる、というのを本人がだいぶ気にしているので、部下はそこにツッコミはいれなかったが。
「魔王様、あんな恋のおまじないを本気で信じているのですか?」
魔王の部下は呆れて告げたが、魔王ノエルは“うっさいわ!”と頬を染めてつっぱねてきた。
そしてうきうき気分で手紙をポストに入れてきてしまったのである。
「うっふふふふ、我のラブレター!月明かりの下、一体どんな素敵な女性と巡り合えるのかな!楽しみであるな!!ふふふふふ」
人、それをフラグという。
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