プロローグ

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プロローグ

「それでは、よろしくお願いします!」  やや緊張気味の生徒たちを前に、水津(すいつ)芹奈(せりな)は笑顔で言った。  第一声はできるだけ明朗快活に。これは芹奈の仕事をする上での心構えのひとつである。  芹奈の言葉を受けて、集まった四人の生徒たちはそろって小さく頭を下げた。  本当なら声を出してほしいところだが、新年度はまだ始まったばかりだから、そこまで多くは求められない。 「まずは事務連絡をいくつか。今配ったプリントに沿って話すね」  今日は四月十日、月曜日。  新学期が始まって最初のチーム面談だ。芹奈の言葉にも自然と力が入る。 「第一回の志望校調査は、来週末までに提出してください。もちろん、書けた時点ですぐに見せてくれてかまわないからね。それから、学校の年間行事予定表も、持ってるようならすぐに出してください」 「俺、持ってきてます」 「お、さすが駒宮(こまみや)くん。じゃあ、あとでコピーを取らせてもらうね」  生徒の声が出ると、それだけで場が明るくなる気がする。  芹奈は気をよくして次の話題へと進んだ。
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