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「あ、はい。えっと、こんな感じで……」
言いながら、芹奈は四人の生徒の基本データが書かれた用紙を取り出す。
それを譲治に手渡したとき、ふと思う。
「あれ? 先生って今日はうちじゃないですよね?」
「ちょっと授業の準備をしておきたくて」
譲治がこの校舎で授業を担当するのは月曜と金曜で、今日は火曜だからここには来ないはずだった。
それでも、譲治がよくここでパソコン作業をしている姿を見ていたから、芹奈はすぐにこの状況を理解することができた。
授業中は怖いし今でも気軽に話すことはできないけれど、いてくれれば頼もしいことは間違いない。
「この子、英文法だけなんだ?」
譲治が注目したのは尚典の受講科目についてだった。
「そうなんです。なんでも、費用面がネックで、アルバイトしてなんとか一講座分の授業料を確保しているみたいです」
これは先週行われた初回面談で明らかになったことだ。
尚典が国公立にこだわっていた理由は学費で、経済的な理由で家から通える国公立になんとしても進みたいらしい。
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