夏休み

80/103
前へ
/446ページ
次へ
    *   *   *  翌日、教室のオープンとほぼ同時にやってきたのどかを捕まえて、臨時の面談を行うことにした。  のどかもそのつもりだったらしく、表情は昨日と比べたらだいぶ明るくなっていた。 「早速だけど、この問題をやってみよう」 「これは、共通テストですか?」 「センター試験の過去問だね。十年前のものだけど、見覚えはないよね?」  現代文の問題はこの十年でほとんど変わりはないから、芹奈が学生時代に解いたことのある問題を選んだ。  これを目の前で解いてもらうのである。 「芹奈さんも解くんですか?」 「ううん。私は奥平さんが解いている様子を見てる」 「えぇ? なんか、緊張しますね」 「本番とはちょっと違う緊張感だとは思うけど、これも練習だと思って」 「わかりました。えっと、現代文だけですか?」 「文学的文章だけにしよう。目標時間は二十分で、最長でも延長は五分」  試験時間は八十分あるが、のどかには古文と漢文を先に解くように言ってある。  そっちを三十分以内に終わらせることが目標で、残り時間を現代文に割くのが基本的な作戦だ。
/446ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加