夏休み

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「受かった学校全部にお金を払うわけじゃないけど、慎重に考えたいよね。まったく問題なく予定が組めるときもあるけど、一校くらいは締め切りが早くなることもよくあるんだって思っておいて」 「待って、よくわかんない」  にこやかな表情で藍が手を挙げる。  わからないことがあって質問する人の表情じゃないけど、明るい雰囲気を作ってくれるのはありがたい。 「こんな感じで、第一志望の発表前に締め切りになる学校がいくつもあるとするよ? それらに全部合格したとしても、延納手続きをするのは、この中で一番行きたい学校だけでいいよね?」  ホワイトボードに日付と凡例の記号を書きながら説明をする。  合格をたくさん勝ち取ってどこにしようか迷えるのは贅沢な悩みである。 「はいはい、そーゆーこと」 「厄介なのは、ちょっとずつ発表日と手続き締め切り日がずれてて、この時点ではこの大学が一番だったから手続したけど、あとからもっといい大学に受かって、もう一回延納手続きをしなくちゃいけなくなるパターン」 「そんなこともあるんですか?」  今度は雅貴が口を挟む。  藍はもう満足したのか、話半分に聞いている様子だった。
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