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ママには内緒だよ
パパはパソコン一つでお仕事できるから昼間はリビングでしてるけど、メインのお仕事部屋は奥の寝室で、そこに仕事道具?とか薄い本とか円盤とかいっぱいおいてる。これでもサブスクとかにして減らしたらしい…ってそんなの今はどうでもいい。
正座するあたしの前であたしの、その、あれらを一枚一枚確かめるように眺めるパパ。
やめて。
パパが見ていいものじゃないの。
家族が見ていいものじゃないの、それ。
いや、誰が見ていいってものじゃないけど!
「なっちゃん」
「はい…」
「なっちゃんがお絵かき上手なのは知ってるけど」
うん、知ってるね。娘にコピー用紙渡して好きなだけ描きなさいって親だもんね。
「これは才能だよ」
は?
いやいやいやいやいや!普通の親なら直視すらできる代物じゃないでしょ、それ!!
「すごくえっち」
肌色率激高だもんね。
パパの口からえっちなんて言葉、生涯聞きたくなかった。
「キャラの特徴をすごくよくとらえてる」
ってことは受が自分の息子だって気が付いたよね。そうだよ、攻はスパダリって相場は決まってんだよっ!
「娘のこんな才能をこの年で発見できたなんて僕は幸せだよ」
BLに寛容な親とか何なの?!
パパはおもむろに机の下にもぐって、使ってないノートパソコンと板タブをあたしの前に置いた。
「フリーだけどお絵かきソフトは入ってるから。漫画家さんになるなら早いうちにパソコンで書くことに慣れておかないとね」
「……なんであたしの将来を漫画家さんって決めるの?」
「なりたくないの?」
「なりたい」
「そうでしょ?なっちゃんの夢くらいパパは知ってるよ!」
BL漫画家でいいと?!
ああっ、もうっ、いや、反対してほしかったわけじゃないけど、ってそもそもみられちゃあああもおおおぉぉぉぅぅっ!!!
「~~~っそれでいいの?!漫画家なんてなろうと思ってなれるわけないでしょ?!」
「大丈夫だよ。なっちゃんならなれるって!こんなに上手だもん」
見せるな。描いたばっかのお兄ちゃんがレオ君に騎乗位してるやつ。
「っ、逆に娘の将来心配にならないの?!」
「期待しかない」
「…お、お兄ちゃんの心配とかは…?」
「たっくんはいいんだよ。人生イージーモードだから」
「なんで?!」
「男はね、身長で人生が決まるんだよ」
真顔。
そうだよね、パパは身長160しかないもんね。
いや、そうじゃないでしょっ!
知ってる人に見せたらドン引きどころの騒ぎじゃないの!もちろん、漫画にするならキャラは…似せて…うん。まあお兄ちゃんなんかどうなったっていっか。
でもレオ君は…これレオ君ってばれたらあたしがレオ君のチン■知ってるってならない?想像だってわかってもらえんの?パパやお兄ちゃんがいるんだからチ▲コくらい見るでしょ普通に。その想像の延長で、って、なんで14歳で▼ンコ連呼してんのあたし。
「まあともかく、漫画家さんになるにはまずはネットにアップしないとね。そのためにはパソコンで描き慣れたほうがいいし」
「あ、…ありがと」
「がんばってね!」
てね、じゃないでしょ。パパの気遣いはありがたいけど、親として18禁のBLになんか言うことないの?
あたしの方が赤面するわ。
パパはやっとあたしの羞恥心ってもんに気が付いたのか、あ、と声を上げた。
「そっか、まだ14歳だもんね」
そうそれ。せめてまずそれ。
「まだお話相手がいないよね。この道半世紀の知り合いがいるからちょっとコンタクト取ってみようか?」
なんでいきなりラスボス紹介すんのよっ!ていうかなんでそんな貴腐人の知り合いいるの?!三次元ではパパの友達なんて見たことないのに!
でも確かにお話はしてみたい。
「それにSNSやるにもなっちゃんの情報で18禁はまずいからパパがアカウント作るね」
パパが息子のBL描いてることにならない?
「18歳になったら自分のアカウント作ればいいから」
一生パパのアカウントで18禁BL描いてやる。
「……ママには言わないで…」
「えー?ホモが嫌いな女子なんていないと思うけど」
いるよ、絶対っ!オタク語録で全部片づけんなっ!!
「言わないでっ!」
念を押してからパソコンと板タブ抱えてパパの部屋を出た。
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