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禁断のから揚げ&マヨネーズ編・3
夕方の買い物ラッシュをむかえてしまうと、ちょうどいいサイズの鶏肉の安売りは売り切れることが多い。
今日は、一枚入りを買えたら十分だけど、もし三枚入りのパックしか残っていなかったらちょっと困る。
ついこの前、バイト先でもらった鮭の切り身がまだ冷凍庫を占領している。
目的地のスーパーは、元々は地元のお肉屋さんだったらしく新鮮な肉類の安売りを頻繁にしている。
幸いまだ本格的に夕方の買い物ラッシュは始まっていなかった。子ども連れや、年配女性の姿が店内にまばらに散っている。
入口の買い物かごを持って、野菜売り場に入る。
さらっと今日の商品と値段を確認して、肉売り場まで進む。
お目当ての鶏もも肉は、ちょうどいいサイズの一枚入りのパックが買えた。
あとは、衣に使う片栗粉。粉ものの棚の列に入ると、棚の上の方にある見慣れた赤いパッケージが目に飛び込んできた。
(あ、おばあちゃんちの唐揚げ粉)
小さい頃、唐揚げといえば、給食や、仕事終わりのお母さんが買ってくる総菜の、衣がベタベタして冷たくて固い油っぽい食べ物だった。
お母さんは、揚げ直すとか、レンジで温めるとか、そういうことをしない人だ。
食卓に並ぶ唐揚げはいつも冷めきっていて、温かいご飯と一緒に食べてようやく味がわかる、なんて代物だった。母にも私にも、レンジでおかずを温めるなんて発想がそもそもなかったのだ。
はじめて揚げたての唐揚げを食べたのは、小学一年のときの夏休み。
母が昇進してはじめての夏。
どうしても、仕事を休めれないからと言って、私は二学期が始まるまで、おばあちゃんの家に預けられていたときだ。
アツアツの唐揚げのサクサク衣の美味しさを知ってしまったのだ。
そのとき、おばあちゃんが使っていたのがこの赤っぽいパッケージが目を引く唐揚げ粉だ。
あれから何回もねだって作ってもらったから、いまだにおばあちゃんは私が帰ると必ず唐揚げを作ろうとする。
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