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禁断のから揚げ&マヨネーズ編・1
『お母さんに、ラインおくってあげてね』
おばあちゃんからのLINEだった。返信する暇がなくて、私は鞄の中からクリアファイルを引っ張り出しながら、私はPCを立ち上げた。
マイク、カメラのミュート良し。入室。
画面にずらりと黒い四角と学生の名前が並んでいる。
入室者数を見ると、ちょうど受講者数プラス一人だから私が最後の入室者だったようだ。
「え~、じゃあ出欠とりますね。あっ坂木さん間に合ったね」
一番大きな画面で、水原先生が画面の中でにこにこ笑っている。
水原先生は中学教師の経験のある五十代の女の先生で、この科目の担当だった。
ふっくらとした頬と、柔らかそにカールさせた髪のイメージに違わず、基本的には物腰の柔らかな優しい先生だが評価は厳しい。
この演習も、先生が出欠を取るまでにミーティングに入室しなければ遅刻として減点される。
間に合ってよかった。点呼が始まり、名簿順に名前が呼ばれていく。
「坂木悠さん」
マイクオン。
「はい」
返事をしたらマイクオフ。先生は次々に学生の名前を呼んでいく。
全員出席なんて、ミーティングの参加人数を見たらわかるのに、と毎回思う。
けれどこの先生は、最初の授業で
「あなたたちは教育大学を選んで、教員を目指しているのだから、生徒本人の名前を呼ぶことの重要性を知ってもらう」
とかなんとか言って、頑なに毎回いちいち出欠を名前で呼んで取っている。
他に学生一人ひとりの名前を呼んで出席確認をとる先生はいない。
アナログだな、と思う。
今時、小学校の連絡網だってオンラインでやる時代なのに。
「じゃあ、今回の発表は――」
先生が喋りだしたので、音量を最大にしてキッチンへ向かった。
ドアを開けっぱなしにしておいて、他の学生の発表を聞き流しながら、インスタントのカフェオレを入れる。
私の番は先週だったので、出欠も取ったし、今週は他の学生の発表を聞いているだけでいい。
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