第二章 夢を乗せ、悩みを乗せ、走る

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「どのくらいかかりそうですか?」  アビはタイヤの様子をみている柿島に声をかけた。 「うーん……30分ほど、かな」 「分かりました。オーナー、柿島さんの休憩もちょっと入れて40分ほど時間をとりましょうか?」  アビは振り返ってオーナーに声をかける。 「そうだね、そうしようか。ありがとう2人とも」  アビはアナウンスをするためにバスの中へ入っていった。柿島は車体の下からスペアタイヤを取り出す。 「アビくんしっかりしてるなぁ……はい、工具箱。こんなことは初めてだけど、柿島くんがタイヤの交換できて良かったよ」  オーナーが工具箱を柿島に渡しながら言った。 「前の仕事、海の車の整備工場だったから……つぶれちゃったけど」 「家賃も払えなくなって困ってた時に私と出会ったんだよね。私もバスを運行するために社員を探していたから助かったよ」 「オーナーには感謝。人間の姿になるためのお金も出してくれた……」  柿島が作業の手を止めてオーナーに向き合った。 「陸も走るし、人間の方が運転しやすいだろう。私も感謝しているよ。小さい会社だし、せまい家でごめんね」  柿島が首を横にふる。 「今の家、ちょうどいい。私の家……帰る場所できた」 「沈んだ船をちょっとキレイにしただけだけどね、ハハハ……アビくんも帰る場所、早く思い出すといいんだけど。きっと彼の家族が心配してる」  オーナーは心配そうにバスの中でアナウンスをしているアビをみつめるのだった。
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