2人が本棚に入れています
本棚に追加
1回目に人間の姿になったのは、宿川さんと働くための準備をしていた時だった。
「おーそれがアビくんの人間の姿か、若いねー」
宿川さんが人間の姿になった僕をみて言った。
「自分のはずなのに、自分じゃない感じです……鳥の姿のほうが落ち着きます。鳥のままじゃだめですか?」
僕は鳥の姿にもどった。鳥にもどろうと意識するともどることができる。ふしぎな感覚だ。
「いいよ、うん、君は君だ。好きな姿で大丈夫だよ。じゃあスーツと帽子は鳥用に作ってもらうからね」
心があったかくなる。
僕は宿川さんの家で暮らしている。バスの仕事を手伝うことになった。僕の担当は車掌だ。バスの会社は運転手の柿島さんとオーナーの宿川さんが2人で始める予定だったらしい。僕がきたことで、良いサービスが提供できると言っていた。ここにいてもいいって言ってもらえて嬉しかった。
「やっぱり落ち着かない。僕は本当は人間なのか?それとも姿を真似できる変身能力をもったアビなのか?でも前からこの姿には変身できてたし……」
鳥の姿に戻ったアビ。何も思い出せないことが悔しかった。
アビはベンチに置いていたお茶の缶を捨て、軽く羽ばたいて首をふる。
「そろそろバスに戻ろう」
冷たい風がざわざわとアビの羽根を逆立たせる。落ち着かないまま、彼はバスまで歩いていく。
最初のコメントを投稿しよう!