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ごうごうと燃える炎。とても熱くて息ができない。それでもアビはさらに燃えている奥の方へと進んだ。
「美陽さん、どこ……」
席と席の間の通路に美陽は倒れていた。すごい音がして飛び起きたはいいが、炎はすでに広がっていた。逃げようとしてバランスをくずして倒れ、彼女はそのまま動けなくなった。イスが倒れてきたのだ。重くて苦しい、息ができない……彼女は意識を失っていた。
「美陽さん!美陽さん!美陽!」
アビはためらわず、人間の姿になった。人間の体のほうが、彼女の体を持ち上げやすい。
「うう……お兄ちゃん……逃げて……」
美陽がつぶやいた。
「…………待ってろ!お兄ちゃんが今助けるから!」
アビはイスをどかしはじめた。熱くてうまく持ち上がらない。それでもあきらめずにイスをどけていく。
屋根がくずれて2人の上に落ちてきた。アビもつぶされてしまった。もうだめかもしれない……そう思った時
プシュー ジュワー
何か音がしたかと思うと、割れた窓から大量の水が流れ込んでくる。火が次々と消えていく。
「み、水?……これ海の水だ。なんでこんなところに」
みるみるうちに天井まで水に満たされた。どうやら海の中に沈んでいっているらしい。どういうことだ?とアビはふしぎに思う。
「はっ!美陽は息ができない!急がないと!」
アビは自分と美陽の上に落ちてきた天井をどけようとするが、重くて持ち上がらない。
「誰か、手伝って……」
消え入りそうなアビの声。すると窓から黒い影が入ってくる。それは……
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