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「ご案内いたします。まもなく大阪駅に到着いたします。大阪駅では30分停車いたします。次の出発時刻は23時30分でごさいます。時間になると出発いたしますので、遅れないようご注意ください。それでは完全に止まるまでお席をお立ちにならないようお願いいたします」
しばらく道路を走っていたバスは大阪へと着いていた。
「降りてちょっと冒険しようねルカ!」
「しようしよう!」
双子は待ちきれないといった感じで窓の外へチラチラ視線を向け、落ち着かない。
ようやく前方に小さな光が見えてきた。その光は少しずつ大きくなり、建物から漏れ出る光だと分かるぐらい大きくなった。駐車場へと入る。バスはスピードをおとし停車したーー大阪駅に到着だ。
バスの扉が開いた。双子のスナメリが飛び出して行く。待っていた2人の客が驚いて双子をさけた。
「ごめんなさーい!」
2人は声をそろえてあやまりながら走って行く。どうやら頭は人間にすることができたようだ。しかし、まだ尾びれをふりふりさせている。
「な、なんだ?作り物か?」
スラっとした50代ぐらいの男性が、双子の尾びれを見て驚きを隠せない様子で言った。
「お待たせいたしました。お待ちのお客様、お名前を」
アビがバスから出てきて言った。
「と、鳥!」
待っていた2人の客はスーツに帽子の鳥の姿をみて目をまんまるにしている。
「お気になさらず、人間の言葉は話せますので。ではお名前を」
「……まぁ良いか。私は森本直也だ」
先ほどの男性が前へ出て言った。
「はい、確認いたしました。どうぞ中へ。23時30分に出発いたしますのでごゆっくりお過ごしくださいませ。良い旅を」
次に前にあらわれたのは小柄な女子高生だ。光があたると茶色くみえる黒髪で、肩まで伸ばしている。
「お名前を」
「あ、はい。原田美陽です」
「原田様……と。はい、確認いたしました。23時30分に出発いたします。ごゆっくりお過ごしください。では良い旅を」
「ありがとうございます……」
美陽はアビを振り返りながらもリュック1つで乗り込んだ。
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