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#1
「深見沢君」
「東田です」
「ちょっと聞きたいんだがね」
「なんですか、教授」
2人は研究室の片隅で、顕微鏡を前に座っていた。すでに壁掛け時計の針は午前3時を回っていた。
「発見、と聞いて、君は何を思い浮かべる」
東田は少し考えるような表情をし、目の前にある顕微鏡を見つめる。
「我々の使命じゃないですか」
教授の名越は腕組みし、宙に視線を向ける。
「君はいつも優等生的な回答をするな、西田君」
「方角が逆。東田です」
名越は椅子から立ち上がり、腕組みをしたまま、ゆっくりと研究室の中を歩く。
他のスタッフは帰り、研究室には2人だけだった。
「教授、どうしたんですか。そんな基本的な質問を」
名越が立ち止まる。
「『発見』というテーマ。難しいな」
「テーマ?どういうことですか」
「何も思い浮かばんのだ」
東田も立ち上がる。
「言っていることがよくわかりませんが」
名越はまた歩き出し、ビーカーや試験管が並んだテーブルに体を預けるように両手を置いた。
「なぜスタッフは、第206回にこの難解なテーマを選んだのだ」
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