真紅の匣

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真紅の匣

 現代日本では普通の女子高生だった私、市綱(いちずな)エリカは、目覚めたらゲーム世界の蒸騎(スチームナイト)、主人公機ロボのAIへ転生していた。  今は最推しの帝国皇子を救うため、彼が乗る蒸騎のAI、アネモネと連絡を取るため居場所を探そうと思っていたんだけど、これが割とすぐに見つかった。  私も彼女?もAIデータである以上、現代日本で言うところのサーバパソコン上に存在してるんだろうかと当初漠然に思っていて。  でも私一人のAIですら物理的に巨大サイズなわけで、じゃあそんな場所を取る大きな物を一体何処に仕舞ってるんだろう、と考えた時にふと閃いた。  古いパソコン用語でデータの保管されている場所のことをディレクトリと呼ぶが、これは direct-(真っすぐ並べた)  orium(物が保管されている場所)  を語源とする。  いやその話いま関係あるのかと言われそうだけど、コレが実は大有りで。  はたして帝都の一角、学校に例えると体育館を思わせる大きな建物の中に無数の機械式計算機が並べられていた。  しかも厳重に監視された皇族御用達の部屋には、帝国第三皇子にして私の最推しのヴァーリの乗る機体と同じ真紅の色の鋼の(ケース)があったので、これがAIアネモネに違いない。  さて、ここまで私は肝心な事をまだ話していない。  そもそも一介のAIデータで肉体を持たないこの私が、どうやって帝都内を探せたのか。  実はこの 蒸気至高(スチームパンク)の世界、パソコンは無いがインターネットに似た物が存在している。    通称「(ロープ)」と言われるそれは主に人々の連絡手段として帝都中に張り巡らされていて、イメージとしてはインターネットよりは電話回線に近い。  ちなみに名前から丈夫そうなイメージだけれども、その一部に魔力を用いて無線化されている。  また天才技師イーヴァルディの作るAIは何も蒸騎の専売特許という訳ではなくて、その簡易版は工場や門前警備などに配置された 機械化人形(ゴーレム)にも組み込まれ、人の代わりに働いている。  そしてゴーレムは前述のロープと組み合わせる事で、遠隔操作したり映像を遠くに送ることが可能である。  さてココで、私が転生後入手した 特殊技術(スペシャル)の出番。実は私はロープを仲介してこのゴーレムに介入する事が可能なのだ。  と言ってまだ今の所、私が直接ゴーレム本体を動かすのは無理で、精々その目を乗っ取って物を見るのと、計算機に簡単にメッセージを書き残すぐらいしか出来ないのだけれど。  ()にも(カク)にも、こうして私は文字通り帝都中のゴーレムの目を盗んでアネモネを探し出した。
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