真紅の匣

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――あなたがこのメッセージを受け取っているということは、既にAIの卵として存在しているということですね?  私はアネモネのデータに、そうメッセージを書き残す。  少なくともゴーレムよりは知能があると思うので、何かしらの返答を期待していると。 ――はいそうです。 はじめまして、MοR-03。  かくして無事に返答が返ってきたのだった。  ちなみにMοR-03というのは、私がAIモンステラとして命名される前のデータ名だ。 ――こちらこそ初めまして、AnR-01。  アネモネも今はAIとしてまだ命名前なので、同じくデータ名で呼び返す。  さて連絡がついた事でまず今後アネモネが帝国皇子のヴァーリの、そして私が主人公トールの蒸騎のAIになり、将来敵対する事を告げる。  私のような自我がアネモネにもあるのかどうかは分からないけれど、少なくともゴーレムよりは賢く対話が可能だろうという可能性に賭けた。すると。 ――質問です、MοR-03。 その情報を貴方はどうして知り得たのですか?  とメッセージで尋ねられる。  まあ当然の疑問だが、嘘をつく必要もないかと思い私は自分が転生者である事、この世界が前世で私がプレイしたゲームの内容と同じである事を告げた。 ――にわかに信じがたい話ではありますが。  とアネモネ。  まあそりゃそうだ、私がもし今後AIとして顕現し主人公トールにその話をしても、信じて貰える自信が正直ない。 ――事実として話を進めますが、それでMοR-03、いえモンステラ。  貴方はアネモネに何を要求するのですか。  しかし、どうやらアネモネは信じてくれたようだ。  ならばと私は正直に、ヴァーリを助ける為の協力をお願いする。  するとアネモネは少し思案して、 ――条件があります。  と返答してきた。  ほほう、条件と来ましたか。  断られるのも覚悟してたし無償で協力を取り付けるのも心苦しい気がしてたから、余程無茶な要求じゃ無ければ全然条件を飲むけれども…… ――モンステラがそのヴァーリという存在を強く意識しているのと同様に、話を聞いていてアネモネもそのトールという存在に興味が湧きました。  ……おや?  おやおやおや? ――アネモネがヴァーリを助けるのに力を貸す代わりに、モンステラもトールを助ける手助けをする。  これがアネモネの要求する条件です。  私は当然、二つ返事で承諾した。  あ、でももし二人が敵対する事になったら…… ――その場合アネモネは、ヴァーリの蒸騎として己の職務を全うするだけです。  と言うか、そういう事態にならないように我々が努力すれば良いだけでは?  う、確かにそうですねド正論。   ――というか今回の件はあまりアネモネ以外には公言しない方が良いです。  え、何故に? ――おそらくはデータの暴走(バグ)だと思われて通報されたあげく消去修正されるか、世界の秘密を知る者として監視対象になるか、いずれにせよ良い結果にはならないでしょう。  いやマジデスカ。  うわ、アネモネが理解あるAIさんで良かったわー。
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