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「モンステラのその疑問は無意味で無価値だ」
アネモネに同じ話をすると、一刀で切り捨てられた。
最近はメッセージだけでなく直接アネモネ本体と会話が可能になって、親密度が上がり敬語抜きになった。
そして知ったのだが実はアネモネちゃんでなくアネモネ「くん」、男性だったらしい。
基本AIに性別はないので、あくまで対人用の音声と喋り口調としての男性認定だけど。
「戦う為に生きる兵士の戦う意味を疑問に持つなど、食器は何故食べる為に存在するかを問うような物だぞ?」
しかもAIを手がけたイーヴァルディ技師を元にした音声なので、時々技師と会話してるような気になる。
んー、ゲーム中の会話ではアネモネのボイスがなかったから勝手に男っぽい口調の女性声で脳内変換していたので今だに違和感が。
というより私、遠回しに空々って言われてます?
しかも微妙に論点がズレてるし。
「そんな事より、気にならないのか?」
とアネモネ。え、何が?
「愛しのヴァーリが今何をしているのか、だ。モンステラの特殊技術を使えばいつでも見れるだろう?」
確かに私の特殊技術でヴァーリを探し出し、今何をしているのかを見る事は可能だけれども。
いわゆるレベル的な物が足りないのか、それともこういう特殊技術だからなのか現在の所は見る以外の干渉が出来ない。
手を出せないものを見せられてもなー、と言うのが私の感想だし、仮に干渉出来たとしてゲームから外れた行動をし過ぎて展開が変わって、先が読めなくなってもねえ?
「ちなみにアネモネは暇さえあればトールを観察しているぞ。
彼の行動は全てが実に興味深く、見ていて飽きない」
ハッカーのような私の特殊技術は今後必要だろうと、データを介してアネモネにも伝授したけど……まさかヤンデレストーカーAIを産む出す事になるとは思わなかったよ。
しかもトールとアネモネくんだと、ちょっとボーイズラブ臭が、あらやだ。
ただ特殊能力の授与はそんなストーカー爆誕以外の成果もあって、それはアネモネとの「入れ替わり」。
お互いの合意を条件に、現状10秒の短い時間ではあるけれども私がアネモネの、アネモネが私の機体のAIになり操縦が出来る。
その結果直接私がヴァーリと接触出来るのは大きいのだけれど、実はこれをするにあたって大きな問題がある。
特殊技術そのものではなく、主に私個人の問題で。
同じ最新鋭蒸騎くくりのモンステラとアネモネ、けれどその戦闘スタイルは実に大きく異なる。
モンステラは武器を持たずにパンチやキックで相手を倒す近接格闘系で、必殺技は蓄積した蒸気を一気に噴射した力で杭打ちのように拳を繰り出すパイルバンガー。
一方のアネモネの機体は離れた距離から重厚な鉄製のクロスボウを打ち出す、遠距離の攻撃特化。
そして器用なAIであるアネモネはどちらの戦い方も卒なく熟す。
一方空々AIの私はシンプルなモンステラの戦いは得意だが、標準合わせに反撃を受けない立ち位置の確保など、考える事が多いアネモネの機体とはすこぶる相性が悪い。
仮想戦闘空間を作っての戦いでは、まだ一度も蒸騎アネモネを使った戦闘で勝ててない。
うう、推しのヴァーリの機体なのに。
まあゲーム内でもアネモネには散々苦戦させられているわけですが。
ただ、ゲームといえばそろそろSGaLの外伝小説のアレが始まる時期だ。
それだけは生で見ておきたいかも。
「アレとは何だ、モンステラ」
アネモネが興味津々で聞いてきたけども、ふふーん教えないよぉ。
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